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ヒスタミンは星状細胞の神経保護効果を増加させる [医学一般の話題]

ヒスタミンと言えば、花粉症のこの季節において大敵であり、アレルギー性の皮膚疾患では抗ヒスタミン剤が欠かせない。ヒスタミンは炎症の強力なメディエーターであり、自然免疫および後天性免疫のレギュレーターである。

現在、4つのヒスタミン受容体が同定されており(H1-H4)、そのうちの3つ(H1-H3)が脳で顕著に発現する。ヒスタミンは、主要なアミノ作動性脳神経伝達物質であり、イオン恒常性、エネルギー代謝、および神経伝達物質クリアランスなど、星状細胞の活動に重要な影響を及ぼす。

この星状細胞(Astrocytesアストロサイト)は、中枢神経系(CNS)において最も豊富に存在する非神経細胞集団であるが、不活性な足場またはハウスキーピング細胞として概念化されてきた。しかし最近では、この細胞集団がCNSにおける免疫応答を能動的に調節することが示唆されている。

星状細胞の軽度の活性化は、通常、神経保護効果を発揮して神経変性の初期症状を改善する。例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン-3(NT-3)などの神経栄養因子を放出してニューロンの生存を促進し、シナプスの恒常性を維持する。また、最近の研究では、GDNFは小膠細胞の活性化を阻害して神経炎症を緩和することが示唆されている。

しかし、星状細胞の活性化や、脳の炎症におけるヒスタミンの役割については未解明。この研究では、星状細胞がH1、H2、およびH3を発現するが、H4受容体を発現しないことを明らかにした。また、ヒスタミンは、これらの3つのヒスタミン受容体の発現を選択的にアップレギュレートして星状細胞の活性化を誘導した。さらに、H1、H2、およびH3受容体を誘発することによってTNF-αおよびIL-1βの産生を抑制し、アストロサイトによるGDNFの合成を刺激した。したがって、ヒスタミンは、GDNF合成のアップレギュレーションに伴う星状細胞TNF-αおよびIL-1β産生を抑制することで、星状細胞の神経保護効果を誘発すると考えられる。

しかし一方、星状細胞の強力な活性化は、大量のサイトカイン、ケモカイン、活性酸素種、および炎症促進性メディエーターを分泌させ、ミクログリア、ニューロン、および周囲の細胞状態に影響を与え、興奮毒性、神経変性およびアポトーシスを促進する。

本研究では、ヒスタミン(0.001,0.01,0.1,1μg/ml)が星状細胞に神経保護作用および抗炎症作用を及ぼす傾向があることを確認している。しかしながら、高濃度でのヒスタミンの影響は知られていない。マスト細胞の主要な分泌タンパク質であるトリプターゼは、低濃度では細胞内ROS産生を適度に減少させるが、星状細胞では高濃度でTNF-αおよびIL-6分泌を有意に増加させることが判明している。したがって、傷害を受けたCNSにおいて、星状細胞が多面的な役割を果たすことを示しており、CNS傷害の性質および重症度によって、異なる様々なシグナル伝達事象を通じて状況依存的に決定されると推測される。

出典文献
Histamine upregulates the expression of histamine receptors and increases the neuroprotective effect of astrocytes
Jiawen Xu, Xiang Zhang, Qingqing Qian, Yiwei Wang, Hongquan Dong, Nana Li, et al.
Journal of Neuroinflammation201815:41
https://doi.org/10.1186/s12974-018-1068-x
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体温の不明な増加は死亡率の予測因子となる [医学一般の話題]

個人のベースライン温度は測定誤差または環境要因のみに起因するものではなく、有意義な変動を示して患者要因と相関することが報告されている。

デザインは、観察コホート研究。大規模研究病院の電子記録のデータセットから、2010~12年に病院の救急部および外来を受診した患者を同定し、これらの患者の2009~14年の体温測定を含む外来受診データを収集37万4,306件)。これらの患者より、感染症の診断を受けていないか抗菌薬を処方されておらず、体温が正常範囲内と予測される患者3万5,488例(体温測定:24万3,506件)を解析の対象とした。

平均温度は36.6℃(95% range 35.7-37.3℃, 99% range 35.3-37.7℃)。

原因不明の温度変動はその後の死亡率の重要な予測因子であった。具体的には、0.149℃の増加は、年間8.4% の死亡率上昇に関連した(P=0.014)。

体温は加齢とともに低下し、年齢が10歳高くなるごとに0.021度低くなった(p<0.001)。白人男性と比較して最も体温が高かったのはアフリカ系米国人女性で、0.052度の差が認められた(p<0.001)。

疾患別では、甲状腺機能低下症は-0.013℃(P = 0.01)、癌では0.020高くなる(P <0.001)。

従来、深部体温の研究は、主に平均体温の確立に重点が置かれてきた。しかし、体温は多様な因子の影響を受けており、個々の患者のベースラインの体温には系統的な差がある可能性がある。

最も注目すべきことは、気温と死亡率の関係。 これは、ショウジョウバエおよびCaenorhabditis elegansをはじめとする一連の(恒温性)実験モデル、およびより低い体温に設計されたトランスジェニック(恒温動物)マウスにおいて、体温の低下が寿命を延ばして老化を遅延させることを示す研究結果に適合する。

個々の温度は、患者の特徴、特に代謝および肥満に関連するものと高度に相関していた。これらの違いは、明らかな熱力学的要因による可能性がある。この研究結果は、個人のベースライン温度の生物学的根拠は何かという、一連の質問を提起している。

また、この研究から得られた知見は、「ビッグデータ」が新しい医療知識を生み出すために役立つことをを示している。

出典文献
Individual differences in normal body temperature: longitudinal big data analysis of patient records
Ziad Obermeyer, Jasmeet K Samra, Sendhil Mullainathan,
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5468 (Published 13 December 2017)
Cite this as: BMJ 2017;359:j5468

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高脂肪食の摂取は視床下部における炎症応答を活性化する [栄養の話題]

食餌誘発性肥満では、長鎖飽和脂肪は視床下部でTLR4および小胞体ストレス依存性炎症反応を引き起こし、食物摂取およびエネルギー消費を制御するニューロンに対して重度の損傷を与える。

体重の恒常性は、身体のエネルギー状態を感知するニューロンと食物摂取およびエネルギー消費を調整するエフェクターニューロンとの複雑な相互作用に依存している。

身体のエネルギー状態を感知するニューロンの多くは視床下部に存在し、全身エネルギー貯蔵の短期および長期変動を示す循環ホルモンおよび栄養素に応答するように設定されている。

この研究では、マウスに高脂肪食を与え、リアルタイムPCR、イムノブロット、免疫蛍光法、透過電子顕微鏡、および代謝測定を用いて分子および構造を調べている。

その結果、高脂肪食の摂取は他の脳室領域の変化に先立ち、正中隆起に炎症性サイトカインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を増加させた。正中隆起β1細胞の構造的組織の早期喪失を引き起こし、BDNFの免疫中和によって、正中隆起の血液/脊髄液界面の食事誘発機能損傷と食餌誘導性視床下部炎症を悪化させて体重を増加させる。

脳由来の神経栄養因子は損傷に対して早期に防御するが、大量の食物脂肪が持続的に消費されるとその機能が失われる。

出典文献
Dietary fats promote functional and structural changes in the median eminence blood/spinal fluid interface—the protective role for BDNF
Albina F. Ramalho, Bruna Bombassaro, Nathalia R. Dragano, et. al.,
Journal of Neuroinflammation201815:10
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1046-8

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雷雨によって急性呼吸器患者の救急搬送と院内心停止の発生率が増加した [環境問題]

雷雨喘息(thunderstorm asthma)は希な症状で、日本ではほとんど聞かれないが、花粉のようなアレルゲンと雷雨が重なるとハイリスクの人々に重症の喘息などを起こすことが海外では報告されている。

オーストラリアのビクトリア州メルボルン市周辺では、発生した雷雨(2016年11月21日)によって雷雨喘息が多発する緊急事態に遭遇した。今回の患者数は非常に多く、約1万3000人が医療機関を受診し、その内の3000人以上が呼吸器症状を訴えていた。

午後6時から深夜までの救急要請は予想の2.5倍、急性呼吸器疾患のための救急医療出勤が432%増加し、病院への緊急輸送は17%増加。院内心停止の発生率は 82%(67% ~ 99%)増加し、病院前死者は 41%(29% ~ 55%) 増加したと報告されている。

雨によって穀物が膨張して破裂し、細かい呼吸粒子となって細気管支まで侵入してアレルゲンとなり喘息発作を誘発すると考えられているが、検証されているわけではない。

気象因子として、気温、湿度、気圧などと喘息患者の症状との関連性を調べた研究は数多い。気象因子の絶対値と他の環境因子(大気汚染浮遊粒子濃度など)と喘息の相関関係を重回帰分析によって調べている文献が多いが、結果は相反する内容となっている。例えば、気温については相反する結果が得られており、他の気象因子についても明確な関連性は認められていない。一方、NOx,SO2,黒煙などの大気汚染浮遊物や,花粉などのアレルゲンが喘息の悪化と関連しているとする報告はある。イギリスでは、落雷によって、救急処置を要する喘息患者が多発したという報告が多く見られる。この要因として、雷が発生する時の気象条件が草花粉の地上付近での濃度を上げていることが一因と考えられている。

しかし。

個人的には、雷の空中放電によって生じた、窒素酸化物による気道への直接的な作用が大きいのではないかと推測するのだが、この文献ではそのような指摘は記されていない。

雷による空中放電のエネルギーで、大気中の窒素が酸素と反応して二酸化窒素などの窒素酸化物が生成され、さらに酸素によって硝酸へと酸化される。

大気中の亜硝酸による生体影響は懸念されているものの報告例は少なく、規制の対象とはなっていない。一方、二酸化窒素は、疫学調査で喘息に影響するとされ、1970年代に規制されている(但し、二酸化窒素測定法では亜硝酸も二酸化窒素として測定されるため、疫学調査による喘息影響が二酸化窒素と亜硝酸のどちらに起因するものかは不明。)

窒素は大気の約78.08%を占めるが、非常に安定しているためそのままでは利用できない。地球生態系では、不活性の窒素ガスを反応性の高い窒素化合物に変換するプロセスが2つがある。その1つは、マメ科植物の根粒菌による窒素固定で、年間1.8億トン。もう1つは、雷の放電による窒素固定で、年間0.4億トンと言われている。

発作の予防として。

喘息予防薬を服用している患者では11月21日の喘息発作の増加は21.3%であったのに対し、拡張剤のみを服用した患者では103.1%増加した。また、単独服用患者の緊急医療サービスの累積需要(incident rate ratio 9.39) は、喘息予防薬を服用している患者(incident rate ratio 1.68)の5倍以上であった。日頃の、抗炎症治療が重要となる。

出典文献
Stormy weather: a retrospective analysis of demand for emergency medical services during epidemic thunderstorm asthma
Emily Andrew, Ziad Nehme, Stephen Bernard, et .al.,
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5636 (Published 13 December 2017)
Cite this as: BMJ 2017;359:j5636

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CD34 陽性自家造血幹細胞移植によって強皮症患者の生存率が向上した [医学一般の話題]

びまん性皮膚全身性硬化症 (強皮症) 患者を対象とする、CD34+選択自家造血幹細胞移植の効果をシクロホスファミドと比較した研究で、CD34+は全生存率とイベントフリー生存率が改善したと報告されている。

重度の強皮症は壊滅的な転帰をもたらす疾患であり、現在、有効な治療法は無い。

様々な体性幹細胞の表面マーカであるCD34は、骨髄由来の造血幹細胞、血管内皮前駆細胞、骨格筋衛星細胞などに発現しているが、CD34陽性細胞を用いた血管再生療法は、急性心筋梗塞や拡張型心筋症など、様々な心血管疾患患者を対象とした治療に使われ初めており、高い安全性と良好な初期成績が報告されている。

この研究は、重症強皮症の成人 (18 ~ 69 歳) を無作為に、CD34+選択自家造血幹細胞移植群(n=36)とシクロホスファミド群(12ヶ月投与n=39)の2群に分けて比較したもの。

主要エンドポイントは、疾患特徴の階層に基づくグローバルランクの複合スコアによって評価。その内容は、54ヶ月における死亡、イベントフリー生存 (呼吸、腎臓、または心不全のない生存)、強制肺活量、健康評価のアンケートによる障害指標スコア、および変更された Rodnan スキンスコア。

54 ヶ月のイベントフリー生存率は、移植群79%、シクロフォスファミド群50%(P=0.02)。

72ヶ月におけるKaplan–Meierでは、イベントフリー生存率は74% vs 47%、全体の生存率も86% vs 51%と移植を支持(P=0.03 and 0.02, respectively)。

移植群の参加者は、54ヶ月までに9%が抗リウマチ薬(DMARDs)を開始し、シクロホスファミド群では44%であった(P=0.001)。

治療関連死亡率は、移植群は54ヶ月で 3%、72カ月では6%であったのに対し、シクロホスファミド群は 0% であった。

CD34+選択自家造血幹細胞移植によって、重症強皮症患者のイベントフリー生存率が6年間で74%であったことは朗報と言える。

出典文献
Myeloablative Autologous Stem-Cell Transplantation for Severe Scleroderma
Keith M. Sullivan, Ellen A. Goldmuntz, Lynette Keyes-Elstein., et. al.,
N Engl J Med 2018; 378:35-47January 4, 2018DOI: 10.1056/NEJMoa1703327

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基準値以下でも微小粒子状物質とオゾン暴露の増加で死亡率は上昇する [環境問題]

大気汚染への短期的な暴露と死亡率の関係について調査した研究の結果、基準値以下であっても、微小粒子状物質とオゾン暴露の増加によって死亡率が上昇した。

PM2.5とオゾンに対する短期曝露(死亡の同じ日と1日前の日の平均曝露の平均)と2年間の死亡率との間の関連性を、ケース・クロスオーバー設計と条件付ロジスティック回帰汚染物質モデルによって推定。

短期間における、PM2.5 の10 μg/m3増加(adjusted by ozone)による相対リスクの増加は 1.05% (95% CI, 0.95%-1.15%)、温暖シーズンのオゾン濃度の10ppbの増加(adjusted by PM2.5)による1日当たりの死亡率増加は0.51% (95% CI, 0.41%-0.61%)。

1日の死亡率の絶対リスクは、1日、100万人当たり1.42(95%CI、1.29-1.56)および0.66(95%CI、0.53-0.78)であった。尚、この調査では、暴露 - 反応関係には閾値は認められなかった。

しかしながら、このような研究は目新しいものではない(私が以前に検索した文献だけでも400件近く存在する)。

以前に、私が、36件の同様の研究報告を統合して解析した結果では、10ppbの上昇24時間で死亡率は約1%増加し、呼吸器疾患では3%増加した。糖尿病では、10ppb8時間で8.28%増加したとする報告もあった。これらの数値を見ても実感が沸かないかも知れないが、インフルエンザの致死率がわずか 0.045%であること(WHO報告)と比較すると、影響の大きさが理解できるはずである。

* 因みに、1ppb とは、1000m×1000m×1000mの容積中に1辺が1cmの物質が1個存在することを意味している。

日本における環境基準値は0.06ppmで、作業環境におけるオゾン濃度基準では0.1pmを許容濃度としている。これは、1日8時間、週40時間程度の労働時間中に暴露する濃度の算術平均値がこれ以下であれば健康被害は起こらないとする考である。しかし、認識の誤りは明確である。知らぬ間に、作業環境の中で(例えば、電気溶接など)呼吸器や心臓血管にダメージを受けているのである(急性死するような濃度では、その臭いによって感知できる。)。

酸素分子が3つ結合したオゾンは強力な酸化剤であるため、地上レベルに存在するオゾンは大気汚染物質である。その酸化力と、反応後は無害なことから殺菌・消毒目的に使用されているが、人体に対しては有害である。室内の殺菌・浄化をうたい文句にしたオゾン発生器(日本では基準や規制が無い)は危険であり、健康被害の報告も散見されている。しかし、ほとんどの人は、自身の不調の原因として認識できていないのが現実である。

出典文献
Association of Short-term Exposure to Air Pollution With Mortality in Older Adults
Qian Di, Lingzhen Dai, Yun Wang, et al.,
JAMA. 2017;318(24):2446-2456. doi:10.1001/jama.2017.17923

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ω-3脂肪酸の摂取量と緑内障リスクの関連性 [栄養の話題]

アメリカにおける、多価不飽和脂肪酸(特にω-3脂肪酸)の日常摂取量と緑内障の罹患率との関連性について調査した研究で、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸摂取量の増加は緑内障のリスク低下と関連していた。しかし、より高い四分位数での全不飽和脂肪酸摂取量では緑内障リスクは有意に上昇した。

研究は、3865名を対象にした横断的集団調査。

エイコサペンタエン酸の毎日の食事摂取量の増加は、オッズ比0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)。ドコサヘキサエン酸も、OR、0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)と、オッズ比の有意な低下と関連していた。

しかし、総食餌性多価不飽和脂肪酸の第2四分位のORは2.84(95% CI, 1.39-5.79)、および第3四分位のOR2.97(95% CI, 1.08-8.15),95%CI、1.08-8.15)と、より高い四分位数における全不飽和脂肪酸摂取量の日常レベルでは緑内障罹患率は有意に上昇した。

これらの知見は、ω-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸)の緑内障に対する作用を評価するためには、縦断研究または無作為化臨床試験が必要であることを示唆している。

出典文献
Association of Dietary Fatty Acid Intake With Glaucoma in the United States
Ye Elaine Wang, Victoria L. Tseng, Fei Yu, et al.,
JAMA Ophthalmol. Published online December 21, 2017. doi:10.1001/jamaophthalmol.2017.5702


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出生前アルコール暴露は成人発症性神経因性疼痛のリスク要因となる [医学一般の話題]

出生前アルコール暴露(PAE)による影響が成人期まで持続することは、これまでにも多くの臨床研究で報告されている。本研究では、PAEが脊髄星状細胞および末梢白血球を初回刺激して成人発症性神経因性疼痛に対する感受性を持続させることが示されている。

軽度の坐骨神経慢性狭窄傷害(CCI)がPAEラットにおいてのみ頑強なアロディニアを引き起こす。同時に、CCI適用後のPAEの病理学的効果は、アロディニアの増強および脊髄グリア活性の上昇によることを示している。

さらに、軽度のCCIでは脊髄星状細胞活性化は増加するが、ミクログリアは増加しないため、星状細胞がPAE誘発感覚プロセッシングに対する感受性に大きな役割を果たすことを示唆している。

PAE由来の白血球集団は、リンパ系器官および他の領域における白血球集団の分布と異なっている。また、 in vitroにおける白血球刺激後、PAEのみがTNF-αおよびIL-1βの産生を増加させるなど、抗原刺激に対する免疫応答が増大する。

CCI操作は4つのクロマチン縫合による。軽度のバージョンは1つの坐骨神経周囲を単一の縫合によってゆるく結紮している。脊髄神経膠免疫反応性を免疫組織化学を用いて調べ、白血球集団の特徴づけおよび機能的応答を、フローサイトメトリーおよび細胞刺激アッセイを用いて試験。さらに、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を定量している。

最近の報告でも、妊娠中の母体におけるピーク血清エタノール平均レベルが60-80mg/dLの適度な飲酒が、免疫活性化または神経組織へダメージを与えて後期中枢神経系(CNS)機能不全を悪化させるという考えを支持している。

出典文献
Prenatal alcohol exposure is a risk factor for adult neuropathic pain via aberrant neuroimmune function
Joshua J. Sanchez, Shahani Noor, Suzy Davies, Daniel Savage, Erin D. MilliganE,
Journal of Neuroinflammation201714:254
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1030-3

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退役軍人の慢性的筋骨格系痛にみる脳白質構造の崩壊 [医学一般の話題]

ペルシャ湾岸戦争(1990-1991)における700,000人の退役軍人の約25%に慢性的な筋骨格痛(CMP)が存在するが、痛みの原因は不明で効果的な治療法もないとのこと。少数の文献によって、湾岸戦争退役軍人(GV)の脳に異常が存在すると示唆されているが、症状との因果関係については未解明。

本研究は、GVCMPと健康なベテランコントロール(GVCO)の白質(WM)を比較して、脳の完全性と症状の関係を調べている。

30人のGVCMPおよび31人のコントロールに対し、拡散テンソルイメージングによる磁気共鳴イメージングを実施。脳を中心とした空間的統計量は、全脳におけるWMの分数異方性、平均拡散率、放射拡散率、および軸方向拡散率を推定し(P <0.05)、閾値のないクラスター増強を用いて補正。

GVCMPは、GVCOと比較して、より大きな疼痛症状、気分障害、より低い生活の質および身体機能を有していた(P <0.05)。

GVCMPは、慢性疼痛に関与する、中および下前頭回、脳梁、放射冠、前中心回旋、外嚢、および後方視床放射を含む領域の白質の完全性が低く(P <0.05)、広範な脳領域における微細構造の破壊が疼痛および気分症状と関連していた。

出典文献
Cerebral white matter structure is disrupted in Gulf War Veterans with chronic musculoskeletal pain
Van Riper, Stephanie M.a,b; Alexander, Andrew L.c; Koltyn, Kelli F.b; Stegner, Aaron J.a,b; Ellingson, Laura D.d; Destiche, Daniel J.c; Dougherty, Ryan J.b; Lindheimer, Jacob B.a,b,e; Cook, Dane B.a,b,*
PAIN: December 2017 - Volume 158 - Issue 12 - p 2364–2375
doi: 10.1097/j.pain.0000000000001038

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末梢オキシトシン受容体はWDRニューロンへの侵害入力信号を抑制する [鍼治療を考える]

脊髄後角におけるオキシトシン受容体(OTRs)は、AδおよびC線維によって媒介されて侵害受容ニューロン発射を抑制することが示唆されている。

この研究の知見では、OTRs は皮膚を支配するCGRP作動性末梢神経において発現し、表皮表層における活性化によってC 線維放電の抑制を誘発して痛覚を抑制する。

OTの皮下注射は、ラットにおけるホルマリン誘発侵害試験のフェーズI(100μg/足;図2B)およびフェーズII(31および100μg/足;図2C)におけるflinching動作を防止した。

この抗侵害受容作用は局所的であるばかりでなく特異的でもある。なぜなら、最高用量のOTによって、運動協調試験に何ら変化を与えなかったからである。

強力かつ選択的な OTR 拮抗薬のL-368899 (10 および100μ g/前足) の皮下注射は、OT 誘発行動をブロックした。尚、この効果は、ホルマリン試験の第 II 相において明らかに観察された。興味深いことに、nocifensive反応の増加は、フェーズIIの、L-368,89910μg/足において誘発された。さらに、WDRニューロン群の神経活動を測定したところ、OT誘起 a 線維およびC 線維が前足への10μg L-368899 によってブロックされた。

RFの末梢電気刺激は、脊髄後角WDR細胞の明確なニューロン応答を誘発したが、OT(sc; 1〜56μg/50μL)の単回皮下投与後、AδおよびC線維の発火反応の用量依存的な減少が観察された。

末梢皮膚における OTRs の生理学的機能について、OT は培養ヒトケラチノサイトで発現し、外部刺激 (傷害に似た) に反応して放出される。鍼治療への応用を考えるには適切な刺激法とその効果を知ることが求められるが、残念ながら、この研究では調査されてはいないようだ。

オキシトシン(Oxytocin)は、アミノ酸残基9個からなる下垂体後葉ホルモンの1つ。オキシトシンは、もう1つの下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシン(Vasopressin;抗利尿ホルモン)と同様に、主に視床下部の視索上核および室傍核に局在する大細胞性神経分泌ニューロンの細胞体で産生される。

オキシトシンは、ギリシャ語okytokos(okys;速い, tokos;出産)に由来しており、子宮筋の収縮作用による分娩の促進および出産後の授乳時の射乳反射を惹起する。1953年に、動物のペプチドホルモンとしては最も早く構造が明らかにされたホルモン。しかし最近では、動物や人間においても脊髄レベルで鎮痛を誘発するため、興味深い分子として浮上している。

出典文献
Peripheral oxytocin receptors inhibit the nociceptive input signal to spinal dorsal horn wide-dynamic-range neurons.
González-Hernández, Abimaela; Manzano-García, Alfredoa; Martínez-Lorenzana, et al.,
PAIN: November 2017 - Volume 158 - Issue 11 - p 2117–2128
doi: 10.1097/j.pain.0000000000001024

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新しい抗炎症治療の可能性 [医学一般の話題]

最近では、うつ病や2型糖尿病(T2D)は生物学的起源を共有し、そのメカニズムとして、視床下部下垂体副腎の不全によって誘発された慢性的なサイトカイン媒介性炎症反応であることが示唆されている(1.2.)。T2D はうつ病のより高い感受性と関連付けられ(3.)、うつ病はT2D のリスクを60%増加させると報告されている(4.5.)。

NLRP3は免疫系タンパク質で、タンパク質複合体であるインフラマソームの構成成分であり、自然免疫機構として、病原体の構成成分などを特異的に完治して排除するために炎症応答を惹起する。しかし、その暴走は、2型糖尿病、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、および自己免疫疾患などの重篤な炎症性疾患の発症に寄与する。

糖尿病治療薬のGlyburide は、NLRP3 インフラマソームの阻害剤として有効であり、海馬のインスリンシグナリングと同様に、インスリン不耐性や行動のパフォーマンスを改善することが示されている(6.)。

しかし、Glyburide は、NLRP3 インフラマソーム活性化を防止する最初に同定された化合物だが、その多面効果の正確なメカニズムについては未だ不明確。

パターン認識受容体であるNLRP3は、過栄養によって生体内に蓄積した遊離脂肪酸や尿酸塩などの刺激性の代謝物に反応し、タンパク複合体であるNLRP3インフラソームを形成してIL-1β、IL-18の産生を誘導する。

絶食やカロリー制限、激しい運動、また、低炭水化物ケト原性食によって産生される代謝産物のβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)がNLRP3を直接阻害すると報告されている(7.)。BHBをナノ粒子に封入してから炎症性疾患のマウスモデルに投与すると、血液中のBHBレベルを上昇させるケト原性食を摂取した場合と同じように炎症症状が軽減する。これらの知見から、絶食、ケト原性食の摂取や激しい運動の際に見られる抗炎症効果の一部は、BHB産生とそれによるNLRP3の阻害が関与していると推測される。

BHB とAcAcは、エネルギー欠損状態における哺乳類の生存をサポートし、BHB は、ヒト単球で NLRP3 インフラマソームを媒介するインターロイキン IL-1α,βおよび IL-18 産生を低減する。カロリー制限やケトダイエットの抗炎症作用は、NLRP3インフラマソームの BHB 媒介阻害にリンクすることを示唆している。

さらに別の報告では、MCC950がNLRP3を直接阻害し、ヒト細胞、あるいは自己免疫疾患や自己炎症性疾患のマウスモデルにおいて炎症応答の抑制に効果が示されている。また、MCC950の抗炎症作用は、インフラマソーム複合体中の感染制御に重要な働きをする成分には影響を与えないことも示唆されている。

引用文献

1.
Moulton CD, Pickup JC, Ismail K. Depression and diabetes 2 the link between depression and diabetes: the search for shared mechanisms. Lancet Diabetes & Endocrinology. 2015;3:461–71.
View ArticleGoogle Scholar

2.
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α7ニコチン性アセチルコリン受容体の抗炎症効果と鍼治療 [鍼治療を考える]

アストログリアα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7nAChR)の抗炎症効果は、NF-κB経路の阻害およびNrf2経路の活性化によって媒介されると報告されている(1)。

さらに、以前の研究で、百会(Baihui ;GV20)への電気鍼の前処置によって、再灌流後の神経細胞のアポトーシスとHMGB1放出抑制による梗塞量の減少および神経学的転帰が改善し、この効果がα7nAChRの神経発現の減少抑制によると報告されている(2)。

α7nAChRは、中枢神経系(CNS)および末梢に広く分布しており、CNS内では、これらの受容体はニューロンおよびグリア細胞で発現され、学習、記憶などに積極的に関与している。また、アミロイド-β、グルタミン酸塩、オカダ酸、エタノールなどによって誘導される毒性に対して神経保護作用を示す。

したがって、α7nAChRは様々な神経変性疾患において潜在的な治療標的として重要であり、さらに、鍼治療はこれらの疾患に対して効果が期待できる。

実験では、α7nAChR活性化による抗炎症および抗酸化作用を、一次アストロ培養におけるリポ多糖類(LPS)を用いた神経の in vitro マウスモデルにおいて評価。NF-κB経路に対するα7 nAChRの抗炎症作用はELISA遺伝子発現解析、免疫蛍光分析、ウエスタンブロット法を用いて評価。

α7nAChR 媒介抗炎症反応における Nrf2 経路の役割は Nrf2 ノックアウトアストロサイトを用いて評価。正規 Nrf2 標的遺伝子の発現プロファイルに対するα7nAChR 活性化の抗酸化作用を定量的 PCR とウエスタンブロット法により検討。

脳 ex vivo nf-b ルシフェラーゼシグナルはLPS注入NF-κBルシフェラーゼレポーターマウスモデルのα7nAChR アゴニストによる治療後に評価。

α7nAChRアゴニストGTS21を用いた星状細胞の処理によって用量依存的にLPS媒介炎症性サイトカインが減少し、この効果はα7nAChR発現の薬理学的および遺伝的阻害の両方によって逆転された。このα7nAChR活性化による抗炎症効果はNF-κB経路を介するものであることが示された。また、α7nAChRアゴニストによる治療が、α7nAchRの抗酸化特性を示唆するカノニカルNrf2抗酸化遺伝子およびタンパク質をアップレギュレートすることを実証した。星状細胞馴化培地アプローチを用いて、GTS21処理によるニューロンのアポトーシスが減少した。

NF-κBルシフェラーゼレポーターマウスにおけるLPSを用いたインビボ神経炎症モデルにおいて、生物発光イメージングによってGTS21で処置した脳のLPS誘発NF-κB活性の低下を実証。さらに、NF-κB経路の下流にある前炎症性サイトカインの発現の低下、およびGTS21治療を受けた脳組織におけるNrf2標的遺伝子の増加を観察した。

一方、百会(Baihui;GV20)への電気鍼(EA)の前処理が脳虚血傷害に対する耐性を誘発し、この効果のメカニズムを、ラットにおける脳虚血虚血再灌流モデルを用いてα7nAChRの発現に対する影響が報告されている。

ラットは、120分間中間脳動脈閉塞によって大脳虚血を誘発させ、神経スコア、梗塞量、神経細胞アポトーシス、高機動グループボックス 1(high mobility group box 1;HMGB1)レベルを再灌流後に評価。

その結果、百会へのEA の前処理は、虚血脳における再灌流後のα7nAChR発現の減少を防止した。.また、α7nAChRアゴニストの PHA-543613による前処理は虚血性の脳損傷に対する神経保護効果を示し、拮抗薬である、α-bungarotoxin (α-BGT) の前処理によって、HMGB1 放出におけるPHA-543613の抑制効果は逆転された。

これらの知見は、鍼および薬理学的戦略を通じて、α7nAChR活性化の抗炎症作用を活用することが脳卒中治療の新たな可能性となり得ることを示唆している。

引用文献
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Anti-inflammatory effects of astroglial α7 nicotinic acetylcholine receptors are mediated by inhibition of the NF-κB pathway and activation of the Nrf2 pathway
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高血圧における代謝異常と鍼治療効果 [鍼治療を考える]

高血圧症は代謝異常を伴う疾患であると言われており、血漿オレイン酸(OA)およびミオイノシトール(MI)は潜在的な高血圧バイオマーカーであり、鍼治療によって降圧効果とともにこれらの数値が改善したと報告されている(Mingxiao Yang, et al.,2016)。

高血圧患者と健康な被験者の血漿より、47種の化合物について、MRM-MS(Multiple Reaction Monitoring-Mass Spectrometry)を使用して検出し、バイオマーカーを調査。さらに、鍼治療による降圧効果と、そのバイオマーカーの変化を調査。

47種の代謝産物または化合物
L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-スレオニン、L-(+)- 乳酸、L-バリン、L-ロイシン、L-プロリン、ベタイン、パルミチン酸、ステアリン酸、グリシン、(±)オレイン酸、エイコサン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ガラクトース、スクロース、ソルビトール、ミオイノシトール、フルクトース、セロビオース、尿素、イソロイシン、β-シトステロール、β-シトステロール、L-トリプトファン、アラニン、クエン酸、アゼライン酸、アスパラギン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ピメリン酸、L-セリン、ヒポキサンチン、D-ホモセリン、尿酸、トリメチラルアミンオキシド、ペンタン二酸、アラントイン、リノール酸、シトルリン、オキサロ酢酸およびソルボースα-ケトグルタル酸。

鍼治療の主穴は、太衝(Taichong-LR3)と人迎(Renying-ST9)。その他任意の経穴として、太谿(Taixi-KI3)、内関(Neiguan-PC6)、足三里(Zusanli-ST36)、曲池(Quchi-LI11)。30分間の治療を週3回、6週間行っている。

鍼治療は、血圧を24時間低下させて概日リズムを改善し、OAおよびMIの異常を正常化させた。鍼治療後、ALT、BUNのレベルは有意に低下した(P <0.05)。他のパラメータに関しては、鍼治療前と鍼後の比較で有意差は認められなかった。

鍼治療によって、血圧のリズムのMensor、Amplitude、およびAcrophaseが変化。BPリズムのmensor±SE(標準誤差)は、145.61±0.95mmHg(収縮期)および84.86±0.65mmHg(拡張期)から138.50±1.03mmHgおよび82.10±0.62mmHgに有意に低下した。

但し、ベースラインから治療後24時間の血圧の推定変化の95%CIは、10mmHg以下であった(SBP前対後:SBP:2.41〜6.63mmHg; DBP:0.85〜3.87mmHg)。

現時点で、これらの代謝物が鍼治療の抗圧効果にどのように関与しているかは不明。鍼治療の血糖降下作用については遊離脂肪酸(FFA)の減少に起因すると示唆されている(1.2)。また、鍼治療が非アルコール性脂肪肝疾患のラットのFFAを減少させ、それによって脂質生成と肝脂肪蓄積を減少させることが示されている(3.)。したがって、FFA代謝の調節は、鍼治療の高血圧治療効果の重要な要因として推測される。

軽度の大脳動脈閉塞において、鍼治療はアンジオテンシンIIの発現増加を抑制し、その受容体媒介ホスファチジルイノシトールシグナル経路に影響を与える。結果的に、血管収縮を減少させて虚血領域への血液供給を改善する。

イノシトール3リン酸シグナル伝達経路は、鍼治療の調節効果に関わる主要な細胞内メッセンジャー分子経路の1つであり、鍼治療の血圧におよぼす重要な効果である。

治療穴として、別の報告を見ると。
自発的高血圧ラット (SHR) モデルに対する、血圧 (BP) および尿代謝産物への手技鍼 (MA) の効果を調査した研究報告がある。人迎(ST9)への刺鍼のみで、α-ケトグルタル酸、N-アセチルグルタミン酸、およびベタインを含む尿代謝産物が増加し、収縮期および拡張期血圧, 平均動脈圧と心拍数が鍼治療後に有意に減少した(4.)。

出典文献
A Targeted Metabolomics MRM-MS Study on Identifying Potential Hypertension Biomarkers in Human Plasma and Evaluating Acupuncture Effects
Mingxiao Yang, Zheng Yu, Shufang Deng, Xiaomin Chen, Liang Chen, et al.,
Sci Rep. 2016; 6: 25871.
Published online 2016 May 16. doi: 10.1038/srep25871

1.
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好中球エラスターゼの阻害はOAにおける慢性神経因性疼痛を防止する [医学一般の話題]

モノヨードアセレート(MIA) 誘発 OA における研究で、内因性好中球エラスターゼとプロテアーゼ活性化受容体-2 (PAR2)が、関節炎症, 疼痛, 神経障害(伏在神経損傷)の発症に関与することが示唆されている。さらに、好中球エラスターゼ阻害剤であるsivelestat と serpinA1による早期治療とPAR2遺伝子の ノックアウトによって、好中球エラスターゼの蛋白分解活性を遮断して関節炎症、疼痛、および伏在神経損傷の持続的な改善効果が認められた。今後、新たな治療目標となる可能性がある。

実験では、MIA (0.3 mg/10 μ l) を雄 C57BL/6 マウス (20 ~ 34 g) の右膝関節に注入。関節の炎症 (浮腫、白血球動態)、好中球エラスターゼ蛋白分解活性、触覚アロディニア、および伏在神経の脱随を、注射後14日で評価。sivelestat (50 mg/kg i.p.)と serpinA1 (10 μ g i.p.) を用いて、MIA の初期炎症期における好中球エラスターゼ阻害効果 (0 ~ 3 日) を測定。PAR2 拮抗 GB83 (5 μ g i.p. 日 0 ~ 1) および PAR2 ノックアウト動物を用いて、MIA 誘発関節炎と疼痛の発症における PAR2 の関与を検討。

sivelestatと serpinA1による早期治療は、1日目 (p < 0.001)における好中球エラスターゼの蛋白分解活性を遮断し、関節の炎症、疼痛、および伏在神経損傷 (p < 0.05) の持続的な改善を引き起こした。MIA 誘発炎症は GB83 との早期治療によって逆転し、PAR2 ノックアウトマウス (P < 0.05) で減衰した。PAR2 ノックアウトマウスでは、生理食塩水コントロールに比べ、MIA 誘発関節痛 (p < 0.0001) と神経の脱随は認められなかった (p = 0.81 有意差無し)。

変形性関節症 (OA) 患者の一部は、神経因性関節痛を生ずる。好中球エラスターゼや、セリンプロテアーゼなどのメディエーターが急性 OAの炎症において放出される。エラスターゼの局所投与によって、プロテアーゼ活性化受容体-2 (PAR2) の活性化を介して関節の炎症や痛みを引き起こすことが示唆されている。

OAの発症には炎症が関与しており(1.2.)傷害に続いて、多数の炎症性メディエーターが放出されて関節変形および疼痛を引き起こす。腫瘍壊死因子α (TNF-α)、インターロイキン1β (il-β)、およびインターロイキン 6 (il-6) のような様々なサイトカインは、関節内の炎症促進に作用する(3.4.5.)。また、これらの炎症物質は神経障害を誘発して神経因性疼痛反応を引き起こし(6.7.)、同時に、末梢神経系がOA の早期発症に貢献している 。この急性炎症性 OAの 応答にはサブスタンスP(SP) やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などの炎症性ペプチドが関与しており、これらのメディエーターは末梢神経障害を引き起こすことが知られている(8.9.10.))。

炎症部位に存在する免疫細胞は、好中球エラスターゼ、カテプシンG、プロテイナーゼ-3、およびトリプシンなどのセリンプロテイナーゼを放出し、関節軟骨の崩壊や軟骨下骨をリモデリングする(11.12.)。

好中球は炎症部位に到達すると好中球エラスターゼを放出し、エラスチン線維、IV型コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチンなどの結合組織成分の分解を開始する。さらに、好中球エラスターゼは、マウスの関節内においてプロテアーゼ活性化レセプター-2 (PAR2) を活性化して急性炎症や痛みを誘発する(13.)。
この応答は神経原性で、好中球エラスターゼによるPAR2を活性化し、さらに、一過性受容体ポテンシャルバニロイド4(TRPV4)の活性化によって、神経感作、炎症および痛みを誘発する原因となる(14.)。

SERPINA1 遺伝子は、セリンプロテアーゼ阻害剤 (serpin) の一種であるα-1 トリプシンの産生を指示する。Serpinsは、特定の酵素の活性を阻害する。

OA の定義についてはまだコンセンサスがあるとは言えないので、モノヨードアセレート(MIA) 誘発関節炎をOAのモデルとして評価できるのかは釈然としない。遺伝的、ホルモン、栄養、神経、自己免疫などのメカニズムが示唆されているが、根本的なメカニズムは完全には解明されていない。しかし、膝OA発症に伏在神経が関与することは、鍼治療を考える上での後押しとなるように思う。

(この文献は全文読めるので、実験結果などの詳細は原文を参照されたい。)

出典文献
Prophylactic inhibition of neutrophil elastase prevents the development of chronic neuropathic pain in osteoarthritic mice.
Milind M. Muley, Eugene Krustev, Allison R. Reid and Jason J. McDougallEmail
Journal of Neuroinflammation201714:168 https://doi.org/10.1186/s12974-017-0944-0

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「重複性神経障害の概念を捨てよ」は妥当か [鍼治療を考える]

重複性神経障害(Double crush syndrome;DCS, Double crush hypothesis;DCH, double lesion neuropathy)はUptonとMaconas(1973)が提唱した概念(1)。

手根管症候群の患者には肘部管症候群との合併例が少なからず存在し、さらに、これらの患者では高率に頚椎症性神経根症(CSR)の合併が認められるとして、神経への圧迫はその末梢においても圧迫に対する易損性を生じさせるとし、その原因を軸索流の障害と考えている。

軽微な圧迫によってsubclinical neuropathyに陥っている神経幹は、圧迫部位の末梢における新たな圧迫に対して易損性であることは実験的にも証明されている(例えば、根本1983, )(2)。

私も、臨床においてDCSと思われる症例を頻繁に見かけることから、拙著「絞扼性神経障害の鍼治療」の中でその視点の重要性を指摘している。

しかし、Johnson(1997)は“Double crush syndrome”を欺瞞と断じ、「訓練の不十分な筋電図医が用いる前代の遺物であるとして、この概念を捨てろ」と述べている(3)。UptonとMaconasの報告には、CSRの診断における確実性などに問題点もあるが、Wilboun & Gilliatt(1997)らの批判の中でも本質的と言える指摘(4)について紹介し、それに対する私の細やかな反論を述べたい(以前に、後述したいと記していたので)。

決定的と思われる批判の第1点は、CSRの障害は神経根であることから圧迫部位は後根神経節の近位となるため、Waller変性や軸索流の障害は近位側に向かって進展する。したがって、遠位側に軸索障害が起こることはなく、C7由来の感覚神経成分に異常が生じて手根管症候群が合併することはあり得ないとする批判である。第2点として、園生の意見(5)では、手首の正中神経成分は腕神経叢において上中下神経幹外側内側神経束とさまざまに分かれて存在するので、それらの全てを障害する必要がある。また、電気生理学的異常を伴わない程度の障害で、遠位に脆弱性が生ずることは考えにくいとも述べている。何れも、一見完璧な否定的意見ではあるが、はたしてそうだろうか。

長くなるので、本稿では第1点の問題について考えたい。

犬の腰椎神経根の実験で、異なる圧力を持つ4種類のクリップを使用して圧迫し、脊髄背側後角, 神経根, 後根神経節における P 物質(SP)および ソマトスタチン(SOM)を免疫組織化学的手法によって検出し、神経根圧迫後の軸索流の変化を調査した研究報告がある(6)。

その結果、圧迫後24時間で神経根の軸索流が損なわれ、圧迫部位の遠位に SP と SOM の蓄積が認められた。また同時に、後根神経節の細胞数の減少も認められた。さらに、1週間の圧迫によって、脊髄背側後角の SP とSOM 陽性線維の数が減少した。この実験では、後根神経節より遠位の末梢神経への影響までは調査されていない。しかし、神経根への圧迫の影響が後根神経節や脊髄までおよぶことが明らかとなり、さらに、その影響として、何らかの障害が末梢へもおよぶ可能性もあり得るはずである。

同様の報告として、雑種犬の腰椎神経根に、クリップを使用して7.5 gf の圧力で24時間、1週間、および3週間圧迫した実験もある。

軸索反応に続発した後根神経節における一次感覚ニューロンの形態変化を光学顕微鏡と電子顕微鏡によって調べ、サブスタンスP (SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ソマトスタチン (SOM) の変化を免疫染色にて検討している。光学顕微鏡では、圧迫開始から1週間後に後根神経節細胞に色素融解(chromatolysis)を生じ、形態学的変化を認めた(同様の実験報告は他にも多数有り)。影響を受けたニューロンの電子顕微鏡観察では、細胞核の中央部から周囲への動きと、rough endo-plasmic胞体とミトコンドリアの喪失が明らかになった。免疫組織化学的研究では、中枢の小神経節細胞においてSP、CGRP、SOMが著しく減少した。結論として、神経根圧迫の患者では、機能不全は圧迫サイトの変性に限定されていないことを認識することが重要だと記されている(7)。

神経根への圧迫の影響が、順行性の軸索流の方向だけではなく、その反対側の後根神経節にまでおよぶのであり、さらに、その末梢へも影響する可能性を考慮する必要がある。

剖検による所見によって、subclinicalな状態ですでに絞輪間部分の部分的先細りを伴う随鞘の球状変化という形態学的異常が以前より報告されている。最近の知見では、随鞘形成細胞はミトコンドリアの機能維持を含めた軸索の代謝を補助しており、軸索の発達と生存に必須である。同時に、軸索のシグナルは髄鞘形成細胞、シュワン細胞の分裂、分化、髄鞘の形成と維持に関与している。また、絞輪間部分にその大部分が存在するミトコンドリアは軸索におけるATPの供給源であることから、エネルギー依存性である軸索輸送の維持に重要である(8.9.)。

軸索流(Axoplasmic flow)には、細胞体から神経末端方向への順行性輸送(Anterograde transport) と神経末端から細胞体方向への逆行性輸送(Retrograde transport)があり、軸索内を様々な物質が両方向へ同時に輸送されている。軸索輸送とは、水道管の中を一方向に水が流れるような単純なものではない。

細胞体から神経末端への速い順行性輸送(200-400mm/日)はキネシン(Kinesin)というモーター蛋白が、ミトコンドリア、シナプス小胞、神経伝達物質、酵素等を輸送している。一方、神経末端から細胞体へ向かう速い逆行性輸送(50-100mm/日)は、ダイニン(Dynein)というモーター蛋白が、再利用する蛋白やシナプス小胞、成長因子や代謝物質などを輸送している。遅い軸索輸送では、細胞体から神経末端へニューロフィラメントなどを運ぶ流れ(0.1-2.5mm/日)と、アクチンやカルモジュリンなどを運ぶ(2-6mm/日)ものがある。さらに、未だ未知のモーター分子も存在している。

軸索内では、ナノスケールの微小管のレールの上を、これらのモーター分子が歩くようにして運んでいるのである。この分子の移動速度は、分子を人の大きさにすると秒速100mにも達し、その移動距離は1mの軸索では10万Kmにも相当する、途方も内ない作業なのである。

さらに複雑なのは、微小管の線維は150~500ミクロンの長さしかなく、軸索の端から端までつながってはいない。モーター蛋白は、この互い違いに並んだ線維に荷物を積んだまま見事に乗り換えながら高速で走っているのである。この蛋白には2本足のものと1本足のものがあるが、1本足の場合の移動方法は定かになっていない。

機械的圧迫による神経根内の血流と神経線維の変形が、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの根症状の病態に関与すると考えられている。しかし、神経根圧迫に伴う軸索流の変化の研究は極めて少なく、確かなことは言えないのが現実である。私には、Wilboun & Gilliattらや園生の批判は単純過ぎるように思われる。また、何が何でも、症候の原因を単一病変に求めようとするのは少々傲慢に思える。私は常に、患者の訴える症状の原因は単一ではなく、複数の病態が合併していることを念頭に置いて診察を行うよう心がけている。

頚椎症性神経根症(CSR)の診断について、念のため一言付け加えると。神経根の圧迫が、それのみで痛みを発現しないことは周知の事実。症状の発現には、神経伝達物質や様々な炎症性サイトカインなどの化学的因子が関与する。また同時に、末梢神経の損傷や慢性的圧迫が後根神経節の急性圧迫と同様の反応を惹起することも指摘されている。

画像上、加齢とともにヘルニアの存在や神経根の圧痕形成の頻度は増加するが、有病率は逆に減少する。形態学的変化をそのまま病態として決めつけ、症状発現の原因と判断することが短絡的であることを示唆している(これまでにも、本ブログで繰り返し述べている)。

出版書籍のお知らせ

書籍名 : 絞扼性神経障害の鍼治療
著者名 : 小川義裕
発行所 : 虎の門針灸院
出版日 : 2015年3月22日初版
サイズ : B5版, 188ページ, 図34枚
ISBN 978-4-9908155-2-3
C3047 ¥ 8500 E

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Effect of lumbar nerve root compression on primary sensory neurons and their central branches: changes in the nociceptive neuropeptides substance P and somatostatin, Kobayashi S1, Kokubo Y, Uchida K, Yayama T, Takeno K, et.al., Spine (Phila Pa 1976). 2005 Feb 1;30(3):276-82.

7.
Pathology of lumbar nerve root compression. Part 2: morphological and immunohistochemical changes of dorsal root ganglion, Kobayashi S1, Yoshizawa H, Yamada S.
J Orthop Res. 2004 Jan;22(1):180-8.

8.
Nave KA.,Myelination and support of axnal integrity by glia, nature,468; 244-252,2010.

9.
大野信彦, 軸索と髄鞘の相互作用の分子メカニズム, 山梨医科学誌, 20(1);19-31,2014.


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後骨間神経絞扼性障害における近位橈骨神経病変 [鍼治療を考える]

橈骨神経の絞扼性障害には、肘の回外筋通過部位における後骨間神経の絞扼性障害である橈骨神経管症候群(後骨間神経障害症候群:PINS)と、これより中枢における圧迫である、高位橈骨神経絞扼性障害、および、さらに末梢における、橈骨神経浅枝(知覚枝)の絞扼性障害(異常感覚性手有痛症)があり、それぞれ単独の疾患名で呼ばれている(拙著:「絞扼性神経障害の鍼治療」を参照)。

しかし、高分解能磁気共鳴法による橈骨神経のvoxel(体積要素)正規化 T2信号の視覚評価と付加的定量分析によって、PINSの患者 (19名)の84%において、上腕レベルにおける近位橈骨神経病変(上腕橈骨関節より中枢8.3 ± 4.6 cm)が認められたと報告されている。

これらの病変のほとんどは(75%)特定の体性感覚パターンに従っているが、さらに猿位である後骨間神経の線維束が含まれていた。

これは、自著の中でも繰り返し述べていることではあるが、絞扼性神経障害の診察においては一カ所の絞扼の確認のみではなく、同一神経の中枢および末梢までも広く触診すべきことを示している。私も、上腕レベルへの施鍼も頻繁に行っているが、84%において、上腕レベルに病変が認められたとする結果は意外であった。

出版書籍のお知らせ

書籍名 : 絞扼性神経障害の鍼治療
著者名 : 小川義裕
発行所 : 虎の門針灸院
出版日 : 2015年3月22日初版
サイズ : B5版, 188ページ, 図34枚
ISBN 978-4-9908155-2-3
C3047 ¥ 8500 E

本書は市販はしておりませんが、個人的に販売しております。
購入方法は、カテゴリーの「出版のお知らせ」をご覧ください。

出典文献
Posterior interosseous neuropathy
Supinator syndrome vs fascicular radial neuropathy
Philipp Bäumer, Henrich Kele, Annie Xia, BSc, et. al.,
Neurology November 1, 2016 vol. 87 no. 18 1884-1891
doi.​org/​10.​1212/​WNL.​0000000000003287

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COPDの合併症として痛みが浮上 [鍼治療を考える]

COPD(慢性閉塞性肺疾患:Chronic obstructive pulmonary disease)は、2015 年度の世界における疾患別死亡原因の第4位となっている。COPDとは、慢性気管支炎と肺気腫を統合した疾患概念であり、一度発症した場合には治癒することはなく、適切な治療法もない。

最近、このCOPDの合併症として「痛み」の存在が浮上しており、重度の場合、中等度の痛みの有病率は 66%(95% CI, 44%-85%)と報告されている(Annemarie L. Lee,他2015)。また、強い疼痛は、呼吸困難、疲労、生活の質の低下、および特定の合併症に関連付けられていた。しかし、研究報告は極めて少なく、さらに、COPDに伴う痛みの治療に関する文献は現時点では見つからない。

発症してからでは治すことはできない疾患ではあるが、症状だけでも鍼治療で軽減できないものかと考えている。COPDに対する鍼治療に関する報告では、歩行距離が伸びた程度で、呼吸機能の改善は認められない。

患者数の増加を見込んで、数年前に、呼吸機能を評価するために電子スパイロメーターを購入したが、予想したほどには患者は現れない。他の症状で来院した高齢者に聞いても、それらしい症状を訴える患者は発症率から予想されるような人数には到底およばない。一般に言われる程、この疾患が本当に多いのか疑問にさえ感じている。ともあれ、痛みに対しては手段はあるものと、治療法は考えているのだが、、。

当院で使用している、電子スパイロメーター。
電子スパイロメーター.png

引用文献
Pain and Its Clinical Associations in Individuals With COPD A Systematic Review
Annemarie L. Lee, Samantha L. Harrison, Roger S. Goldstein, et. al.,
Chest, May 2015Volume 147, Issue 5, Pages 1246–1258
DOI: http://dx.doi.org/10.1378/chest.14-2690

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糖尿病患者における血圧目標値の問題 [医学への疑問]

糖尿病患者の血圧は、ガイドラインでは130/80mmHg未満が推奨されている。しかし、過去10年間にわたって議論が続いており、システマティックレビューではこれらの勧告の証拠を疑問視している(1.2.)。

73,738名の参加者を含む49件の、無作為化対照試験の系統的レビューとメタアナリシス研究によれば、降圧剤治療の効果はベースラインの血圧値によって違いが出ている(BMJ 2016)。

ベースラインの収縮期血圧が150mmHg より高い場合、降圧剤治療によって、すべての原因死亡率の相対リスクは0.89(relative risk 0.89, 95% confidence interval 0.80 to 0.99)で11%低下。同様に、心血管死亡率0.75 (0.57 to 0.99)、心筋梗塞0.74 (0.63 to 0.87)、脳卒中0.77(0.65 to 0.91)、末期腎疾患 0.82(0.71 to 0.94)と、それぞれ低下した。

140-150 mm Hg の場合も同様に、すべての原因死亡率0.87(0.78 to 0.98)、心筋梗塞 0.84(0.76 to 0.93)、心不全 0.80(0.66 to 0.97)で、リスクを減少させた。

しかし。
ベースラインの収縮期血圧が140mmHg 未満の患者への降圧剤治療は、すべての原因死亡率(1.05, 0.95 to 1.16)のリスク増加と、心血管の死亡率 (1.15, 1.00 to 1.32)のリスクを増加させた。

メタ回帰分析でも、ベースラインにおける各10 mmHgの低下によって、心血管死1.15(1.03 to 1.29)、心筋梗塞1.12(1.03 to 1.22)と、同様の傾向。

何れも、若干の上昇ではあるが、140mmHg未満ではリスクは高くなっており、これでは治療は有害と言える。したがって、130/80mmHg未満を目標値とすることには問題がある。

血圧の正常値は下げられ続けており、現在の基準値には疑問を感じている。また、一度、高血圧と診断されたなら、一生降圧剤を飲めまなければならないとする考にも疑問を感じている。

降圧薬には、交感神経のβ1を選択的に遮断する薬(メインテート)、アンジオテンシン遮断薬(ロサルタン)、カルシウム拮抗剤(カルブロック)などがあるが、何れも副作用はある。また、長期的に服用することによる、交換神経の反応、心臓そのものへの影響、および他の臓器・組織への影響も懸念される。そもそも何故血圧が上昇する事態になったのかの原因よりも、降圧の機序のみが注視されている。

出典文献
Effect of antihypertensive treatment at different blood pressure levels in patients with diabetes mellitus: systematic review and meta-analyses
Mattias Brunström, Bo Carlberg,
BMJ 2016; 352 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.i717 (Published 25 February 2016)

1.
Reboldi G, Gentile G, Angeli F, Ambrosio G, Mancia G, Verdecchia P. Effects of intensive blood pressure reduction on myocardial infarction and stroke in diabetes: a meta-analysis in 73,913 patients. J Hypertens 2011;29:1253-69. doi:10.1097/HJH.0b013e3283469976. 21505352.

2.
Bangalore S, Kumar S, Lobach I, Messerli FH. Blood pressure targets in subjects with type 2 diabetes mellitus/impaired fasting glucose: observations from traditional and bayesian random-effects meta-analyses of randomized trials. Circulation 2011;123:2799-810, 9, 810. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.110.016337. 21632497.

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高血圧症では運動昇圧反射が過剰となる [鍼治療を考える]

運動は自立神経障害患者の機能的能力を改善し、心血管系疾患やⅡ型糖尿病を予防すると言われている。運動に伴う“運動昇圧反射exercise pressor reflex”は、骨格筋から発生した機械性および代謝性信号が脳の心血管中枢にフィードバックするもので、筋への灌流量を増加させ、心拍出量も酸素摂取量に比例して増加する。これは、迷走神経活動の低下によるもので、運動強度が最大平衡状態に達するまでは全身の交感神経活動増加の証拠は無いと自律神経学の本(例えば、ロバートソン自律神経学)には記されている。

このような根拠によって、抗高血圧症治療法として運動療法が処方されているが、事はそう単純ではない。高血圧症患者では、運動時に骨格筋からの刺激が過剰となり、交感神経活動を反射性に増加させて血圧を上昇させることが多くの研究で報告されており、この過剰な運動昇圧反射の生成には筋の mechanoreflexが関与している(Leal et al., 2008)。

残念なことに、身体活動中の血行動態の異常な変化は、運動中または直後に心臓血管や脳血管イベントのリスクを増加させる(Hoberg et al., 1990; Mittleman et al., 1993; Mittleman et al., 1996; Kokkinos et al., 2002)。それは、高血圧の非薬理学的治療としての運動処方の安全性を問うものとなる。

高血圧症における Mechanoreflex 機能障害は動物モデルによって実証されている。例えば、高血圧ラット (人間の本態性高血圧のモデル)の骨格筋を受動的に伸ばすと、心拍数と腎交感神経活動、および血圧が著しく上昇することが報告されている(Leal et al., 2008; Mizuno et al., 2011a)。

現時点では、高血圧症における mechanoreflex 機能不全の病態の末梢メカニズムを示す証拠はほとんど存在しない。一方、最近のデータでは、孤束核(nucleus tractus solitarius)内の一酸化窒素経路 (脳幹内の mechanoreflex 体性感覚の入力の初期処理のためのプライマリセンター)の異常が示唆されている(Kalia et al., 1981; Person, 1989; Toney et al., 1994; Toney et al., 1995)。

孤束核内のNO前駆体 L-アルギニンの低用量 (1 μ m) の透析によって、正常と高血圧ラットの両方において、受動的な筋の伸張によって誘発される昇圧応答が減少した。

高血圧ではアンジオテンシンII (Ang II) が増加する。このペプチドはnicotinamide-adenine dinucleotide phosphate(NADPH)酸化酵素を刺激することで、スーパーオキシドや他の活性酸素の産生を誘発して活動筋反射の賦活に貢献する(Koba, S., Gao, Z. & Sinoway, L. I.2009)。高血圧症ではAng II が活性酸素を増加させることで活動筋反射を過剰にすると報告されている

これらの知見から、高血圧症患者への鍼治療において、筋の緊張を緩和することによって血圧を低下させようとする方法には注意が必要となる。但し、高血圧で活動筋反射を過剰にする機構は正確には明らかになっていない。

引用文献
.Kalia M, Mei SS, Kao FF. Central projections from ergoreceptors (c fibers) in muscle involved in cardiopulmonary responses to static exercise. Circ Res. 1981;48:I48–I62. [PubMed]

Person RJ. Somatic and vagal afferent convergence on solitary tract neurons in cat: electrophysiological characteristics. Neurosci. 1989;30:283–295. [PubMed]

Toney GM, Mifflin SW. Time-dependent inhibition of hindlimb somatic afferent inputs to nucleus tractus solitarius. Journal of Neurophysiology. 1994;72:63–71. [PubMed]

Toney GM, Mifflin SW. Time-dependent inhibition of hindlimb somatic afferent transmission within nucleus tractus solitarius: an in vivo intracellular recording study. Neuroscience. 1995;68:445–453. [PubMed]

Anna K. Leal, Jere H. Mitchell, A. Smith,TREATMENT OF MUSCLE MECHANOREFLEX DYSFUNCTION IN HYPERTENSION: EFFECTS OF L-ARGININE DIALYSIS IN THE NUCLEUS TRACTUS SOLITARII, Exp Physiol. Author manuscript; available in PMC 2014 Sep 1.

Koba, S., Gao, Z. & Sinoway, L. I.:Oxidative stress and the muscle reflex in heart failure. J.
Physiol., 587:5227-5237, 2009.

アンジオテンシンII が運動時の交感神経賦活に与える影響,木場智史, 上原記念生命科学財団研究報告集, 25 (2011)

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本態性振戦は小脳系の機能不全にリンクされる進行性神経疾患 [医学一般の話題]

本態性振戦は身体の一部の震えを抑えられなくなる神経障害で、本態性と言われるように、脳機能の異常などの原因となる病態が見つかっておらず、生命に関わる疾患ではなく健康上の問題はないと認識されている。

しかしながら、コロンビア大学のElan D. Louisは、小脳皮質に構造変化を認め、病因の中心はプルキンエ細胞にあると報告している(1)。

これより以前にも、本態性振戦とtandem gaitが相関しており、さらに、認知機能も相関していることから、認知と運動回路に関与する広汎性障害であると報告されている(2)。

tandem gaitは、振り出した足の踵を軸足のつま先につけることを繰り返しつつ歩かせる歩行テストで、小脳機能に異常があれば、うまく足がそろわずによろけるか、転倒する。

そもそも、歩行動作は認識および運動神経系の両方が同時に要求される。最近は、高齢者における認知機能と運動機能、および神経疾患との様々な相互作用を調査した文献が増えており(3.)、認知障害によって転倒発生率が80%増加するなど、転倒の独立した予測因子であると報告されている(4)。

本態性振戦は一般的な疾患で、アメリカにおける患者数は約1千万人と言われている。振戦の程度は、非常に軽微なものから日常生活に支障を来すほどの重度なものまである。さらに、上記研究報告が示すように、原因が小脳にある進行性疾患であり、認知機能とも関連するなど決して侮れない疾患と言える。

引用文献

1.
From Neurons to Neuron Neighborhoods: the Rewiring of the Cerebellar Cortex in Essential Tremor
Elan D. Louis
Cerebellum. 2014 Aug; 13(4): 501–512.
doi: 10.1007/s12311-013-0545-0 PMCID: PMC4077904

2
Tandem gait performance in essential tremor patients correlates with cognitive function
Elan D LouisEmail author and Ashwini K Rao
Cerebellum & Ataxias20151:19
https://doi.org/10.1186/s40673-014-0019-2

3.
Rao AK, Uddin J, Gillman A, Louis ED. Cognitive motor interference during dual-task gait in essential tremor. Gait Posture. 2013;38:403–409. doi: 10.1016/j.gaitpost.2013.01.006. [PMC free article] [PubMed]

4.
Tinetti ME, Speechley M, Ginter SF. Risk factors for falls among elderly persons living in the community. N Engl J Med. 1988;319:1701–1707. doi: 10.1056/NEJM198812293192604. [PubMed]

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