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新生児集中治療室における多剤耐性酵母感染の予測因子は体温計だった [医学一般の話題]

新生児集中治療室(NICU)における多剤耐性Candida auris感染の発生が、多用途温度計の使用に関連していると報告された(オックスフォード大学David Eyre博士ら)。

多くの患者に使用する腋窩部温度モニタリングはオッズ比6.8で、C.auris感染の独立した予測因子だった(OR 6.80,95%CI 2.96〜15.64、P <0.001)。

(欧州臨床微生物感染症学会(European Microbiology and Infectious Diseases)の年次総会である欧州微生物学・感染症会議(ECCMID))

酵母Candida aurisは一般環境ではほとんど検出されなかったが、マルチ患者使用機器および走査型電子顕微鏡のプローブ表面上で確認された。さらに、その発生は温度プローブの除去後にのみ制御された。

さらに、マルチユース温度計に加えて、全身性フルコナゾールの使用(3件)がリスク増加に関連した(OR 10.2,95%CI 1.64〜63.5、P = 0.01)。

C.auris診断された入院患者の66例中57例が温度計を使用し、一方、コントロールでは361例中122例が使用した。

この研究による知見は、説明できない医療関連アウトブレイクでは、特に、マルチユースの患者機器を慎重に調査する必要性を示している。

出典文献
Epidemiology and successful control of a Candida auris outbreak in a U.K. intensive care unit driven by multi-use patient monitoring equipment.
Eyre D, et al.,
European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, ESCMID 2018; Abstract O0172.

医療関連施設における、MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、MDRP(multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa)などの、一般細菌による多剤耐性菌感染症は従来より知られている。一方、近年注目されている侵襲性感染症として、2016年6月にCDCは抗真菌薬に多剤耐性酵母Candida auris(C.auris)による感染症についての注意喚起をおこなっている。

CDCがC.aurisによる感染症を懸念している理由は、他のカンジダには認められなかった複数の抗真菌薬に対して耐性を有すること(分離株の約半数が2系統以上の抗真菌薬に対して耐性がある)。また、標準的な検査方法でC.aurisを同定することが困難であること。
したがって、C.aurisは医療施設において、アウトブレイクの原因となる可能性がある。

変形性膝関節症はいつ発症するのか [膝OA]

変形性膝関節症(膝OA)とは何か?。一般的な認識では、慢性の関節炎を伴う関節疾患であり、関節の構成要素の退行変性によって軟骨の破壊と骨・軟骨の増殖性変化をきたし、二次的に関節炎(滑膜炎)を発症する疾患。しかし、明確な定義や診断基準があるわけではない。

発症過程を時系列で知りたいのだが判然としない。文献を探しても、英語力の問題もあってか、それらしい研究がなかなか見つからない。最近、膝OA発症前から、MR画像によって前向きに追跡調査した報告(2015年)を見つけたので紹介したい。

膝OAを発症していない中年の被験者を対象として、膝内側のMR画像上における、半月板内信号強度の自然経過を6年以上追跡した大規模コホートの縦断的研究。

参加者340名(45〜55歳)中、ベースラインで膝半月板に裂傷が見られた71名を除く、269名を被験者とした。

ベースラインのMR画像において、膝半月板に、線状の、組織学的病期分類システムに対応する等級の信号強度が26%存在した。この半月板内信号強度は経時的には解消されず、半月板裂傷に進行する傾向があった。線維性半月板内信号強度を呈する160膝のうち、48ヵ月間のフォローアップまでに19%(31膝)が同じセグメントで半月板裂傷を発症した。

組織学的には、内側半月板内のシグナル強度は、粘液変性のバンドまたは小胞形成およびコラーゲンバンドの分離の病巣を表し得る (1.2)。

ベースラインにおいて半月板内信号強度を伴わない被験者では、6年間のフォローアップ後に半月板裂傷が発症するのはわずか3%(11膝)であった。同じセグメントに半月板内信号強度が存在した場合には、時間の経過とともに半月板裂傷を発症するハザード比は18倍高くなった。

このように、半月板内シグナルが時間とともに解決する可能性は低く、内側の変性半月板裂傷の危険因子とみなされるべきであり、早期膝OA発症に重要な役割を果たす可能性があると述べられている。

重要なのは、このコホートの、ほとんどの半月板裂傷は、強い膝外傷によって引き起こされたものではなく、その裂傷の大部分は退行性であったことである。

これらの知見から、半月板の裂傷は、典型的には急性外傷事象の結果ではなく、むしろ遅発的な変性過程であるという証拠が提示された。半月板裂傷が発症したほとんどの被験者が、既に、ベースラインで半月板内信号強度を有していたので、変性による裂傷を発生するまでの正確な経緯は不明である。

退行性半月板裂傷は、X線撮影による膝関節症の有無にかかわらず、45歳以上の人に共通する(3.4.)。このような裂傷は、X線撮影に基づく変形性関節症を発症するリスクの増加と高い関連がある(5.6.)。したがって、筆者らは、半月板内信号強度が疾患が放射線学的に明らかになる以前に膝の変性プロセスを示すかもしれないという、仮説を提唱している。

日本国内だけで、現在、患者数は1000万人と推定されている。私が病院を退職して開業してから30年以上経つが、膝OAの治療はほとんど変化なく、進歩していない。

出典文献
Natural History of Intrameniscal Signal Intensity on Knee MR Images: Six Years of Data from the Osteoarthritis Initiative
Jaanika Kumm, Frank W. Roemer, Ali Guermazi, Aleksandra Turkiewicz, Martin Englund,
Radiology. January 2016; 278(1): 164–171.
Published online 2015 Jul 14. doi: 10.1148/radiol.2015142905

追伸

以前にも、同様の報告(2015.7.30.:膝OA発症は滑膜炎・半月板損傷が先行する)を紹介している。これは、前述した一般的な認識とは違い、膝OA発症は滑膜炎が先行するとする意見。重複するが、参考までに簡単に述べる。

変形性膝関節症(膝OA)の病態において、その軟骨損傷は症状やリスク増加と関連しないことは以前より指摘されていること。軟骨における病理学的変化は、膝OAにおける開始事象であるとする一般的な概念は、これを支持する証拠は無い。実際、以前にこのブログで紹介した研究でも、初期の病原性プロセスとして半月板損傷、骨髄病変(BMLs)、および滑膜損傷が示唆されている。

この研究では、膝OA発症の48ヶ月前の355膝を対象にした、性別、年齢、および対照膝について1対1のマッチングによるケースコントロール研究で、MRIによる骨髄病変(BMLs)、半月板損傷、滑膜炎の検査結果を、条件付きロジスティック回帰分析によって評価したもの。

滲出性滑膜炎;HR1.81 [95% CI 1.18-2.78])
内側半月板損傷;HR 1.83 (95% CI 1.17-2.89) at P-2予測放射線OA発生率.
At P-1では。
内側 BMLs;HR 6.50(95% CI 2.27-18.62)でリスクは最高の6.5倍
滲出性滑膜炎;HR2.50 (95% CI 1.76-3.54)

膝OAの症状と病態および疾患の進行において、非軟骨性機能の役割を強調する結果となっている。軟骨はOAの痛みの原因になることはほとんどなく、これは、症状と放射線画像との不一致から従来より指摘されていたこと。

Frank W. Roemer1, C. Kent Kwoh, Michael J. Hannon, David J. Hunter, et al.
What Comes First- Multitissue Involvement Leading to Radiographic Osteoarthritis: Magnetic Resonance Imaging-Based Trajectory Analysis Over Four Years in the Osteoarthritis Initiative
American College of Rheumatology, 2015, Volume 67, Issue 8, pages 2085-2096,
Article first published online: 28 JUL 2015 DOI: 10.1002/art.39176

二次引用文献

1.
Stoller DW, , Martin C, , Crues JV, 3rd, , Kaplan L, , Mink JH. Meniscal tears: pathologic correlation with MR imaging. Radiology 1987;163(3):731–735. [PubMed]

2.
Hajek PC, , Gylys-Morin VM, , Baker LL, , Sartoris DJ, , Haghighi P, , Resnick D. The high signal intensity meniscus of the knee: magnetic resonance evaluation and in vivo correlation. Invest Radiol 1987;22(11):883–890. [PubMed]

3.
Guermazi A, , Niu J, , Hayashi D, , et al. . Prevalence of abnormalities in knees detected by MRI in adults without knee osteoarthritis: population based observational study (Framingham Osteoarthritis Study). BMJ 2012;345:e5339. [PMC free article] [PubMed]

4.
Ding C, , Martel-Pelletier J, , Pelletier JP, , et al. . Meniscal tear as an osteoarthritis risk factor in a largely non-osteoarthritic cohort: a cross-sectional study. J Rheumatol 2007;34(4):776–784. [PubMed]

5.
Englund M, , Guermazi A, , Roemer FW, , et al. . Meniscal tear in knees without surgery and the development of radiographic osteoarthritis among middle-aged and elderly persons: The Multicenter Osteoarthritis Study. Arthritis Rheum 2009;60(3):831–839. [PMC free article] [PubMed]

6.
Englund M, , Felson DT, , Guermazi A, , et al. . Risk factors for medial meniscal pathology on knee MRI in older US adults: a multicentre prospective cohort study. Ann Rheum Dis 2011;70(10):1733–1739. [PMC free article] [PubMed]



喫煙は左心室肥大, 収縮機能不全, 心不全入院の危険因子と報告 [医学一般の話題]

参加者は、ベースライン時に心不全(incident heart failure;HF)または冠状動脈性心疾患の既往歴のない4129人(喫煙なし2884人、現在の喫煙者503人、元喫煙者742人)の黒人(平均年齢54歳、女性63%)。

交絡因子を調整した後、現在の喫煙は禁煙と比較して、平均左心室マス指数(mean LV mass index)が高く、平均左心室円周歪(mean LV circumferential strain)はより低かった(P <0.05)。喫煙状況、強度、および負担は平均脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)レベルの上昇と関連していた(すべてP <0.05)。

8.0年間(中央値7.7-8.0)の追跡調査で、147件の心不全入院があった。心不全による入院との関連性では、現在の喫煙者の喫煙強度が、タバコ20本以上/日でハザード比3.48(95% confidence interval, 1.65-7.32)と、約3.5倍。≥15 pack-years.では、ハザード比2.06(95% confidence interval, 1.29-3.3)。

タバコの喫煙が左心室の構造と機能に悪影響を与え、結果として心不全発症のリスク増加に関与する。

但し、参加者が黒人のみであることにこの研究の限界がある。また、いつも思うことだが、「タバコの喫煙」として、単純に十把一絡げに扱って良いのか疑問。

BNPは、心不全によるうっ血を解消するために心臓内で生成されるホルモンで、血管の拡張と強い利尿作用を有するとともに、交感神経やレニン・アルドステロン系を抑制して心臓を保護する。このBNPは、心不全の指標として使われ、基準値は20pg/mL以下。Abstractのみ読んでおり、数値が記されていないため詳細は不明。

出典文献
Cigarette Smoking and Incident Heart Failure: Insights From the Jackson Heart Study
Daisuke Kamimura, Loretta R. Cain, Robert J. Mentz, et al.,
Circulation. 2018;CIRCULATIONAHA.117.031912
https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.117.031912

ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤は炎症性腸疾患のリスク増加に関連する [薬品の問題]

2型糖尿病治療薬である、ジペプチジルペプチダーゼ-4インヒビター(DPP-4阻害剤)の使用は、炎症性腸疾患のリスクの全体的な75%の増加と関連していた。

552 413 person yearsのフォローアップにおいて、208件の炎症性腸疾患事象が発生(100,000人年あたり原発罹患率は37.7%;95% confidence interval 32.7 to 43.1)。DPP-4阻害剤による炎症性腸疾患のリスク増加は100,000人年あたり53.4 v 34.5で、hazard ratio 1.75(95% confidence interval 1.22 to 2.49)。

ハザード比は、使用期間が長くなるにつれて徐々に増加し、3〜4年後にピーク(hazard ratio 2.90, 1.31 to 6.41)となり、4年以上使用した後に減少した(1.45, 0.44 to 4.76)。

DPP-4阻害剤(日本ではテネリア錠:田辺三菱)は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を分解する酵素であるDPP-4の働きを選択的に阻害する薬剤。インスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖降下作用を発揮する。

2型糖尿病治療における、DPP-4阻害剤の使用は、10年前に導入されて以来増加している。しかし、 DPP-4は血清中に存在して多くの細胞機能に関連する。また、免疫応答に関与するものを含む様々な細胞の表面に発現しているため、その阻害によって予期しない作用が現れる可能性がある。糖尿病の専門医は、「良い薬です。」と言うが、、、。

この研究に見る、炎症性腸疾患のような自己免疫状態におけるDPP-4の影響は十分に理解されていない。

炎症性腸疾患のマウスモデルに関する研究では、DPP-4阻害剤による治療によって疾患活性が低下することが示唆されている。一方、臨床データでは、炎症性腸疾患を有する患者の血清DPP-4濃度が、健常対照者よりも低いことが報告されている(1.2.3.)

出典文献
Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and incidence of inflammatory bowel disease among patients with type 2 diabetes: population based cohort study
Devin Abrahami, Antonios Douros, Hui Yin, et al.,
BMJ 2018; 360 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.k872 (Published 21 March 2018)

1.
Magro DO, Kotze PG, Martinez CAR, et al
Changes in serum levels of lipopolysaccharides and CD26 in patients with Crohn’s disease.
Intest Res2017;15:352-7. doi:10.5217/ir.2017.15.3.352 pmid:28670232

2.
Moran GW, O’Neill C, Padfield P, McLaughlin JT
Dipeptidyl peptidase-4 expression is reduced in Crohn’s disease. Regul Pept2012;177:40-5. doi:10.1016/j.regpep.2012.04.006 pmid:22561447

3.
Hildebrandt M, Rose M, Rüter J, et al.,
.Dipeptidyl peptidase IV (DP IV, CD26) in patients with inflammatory bowel disease. Scand J Gastroenterol2001;36:1067-72. doi:10.1080/003655201750422675 pmid:11589380

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鍼の腰椎椎間板ヘルニア治療の効果は牽引や各種鎮痛剤よりも優れていた [鍼治療を考える]

腰椎椎間板ヘルニア(LDH)治療の研究における、システマティックレビューとメタアナリシスの結果、鍼治療の効果は牽引治療や各種の消炎鎮痛剤よりも優れていた。

この研究では、LDHの治療における、鍼治療の有効性に関する証拠を評価するために、電子データベースを検索して鍼治療のランダム化比較試験(RCT)を同定し、RevMan 5.3によってメタアナリシスを行い、GRADE法を用いて証拠レベルを評価。

対象となった研究は30件で、患者は3503名。

鍼治療の総実効レベルは他の治療法よりも高く、腰椎牽引(RR=1.1, 95% CI 1.05 to 1.15; p<0.001)、イブプロフェン(RR=1.24, 95% CI 1.03 to 1.48; p=0.02)、ジクロフェナク(RR=1.44, 95% CI 1.24 to 1.67; p<0.001)、およびメロキシカム (RR=1.16, 95% CI 1.03 to 1.31; p=0.01)。

visual analogue scale (VAS) による評価では、腰椎牽引(SMD -1.33,95%CI -1.82〜-0.84; p <0.001)、ジクロフェナクナトリウム(SMD -1.36,95%CI -2.59〜-0.13; p = 0.03)。

日本整形外科学会(JOA)のスコアでも、腰椎牽引(SMD 0.96,95%CI 0.48〜1.45; p = 0.0001)よりも良好。

さらに、5件の個別試験における総実効率では、マンニトール+デキサメタゾンおよびメコバラミン、イブプロフェン+フグイグルトンカプセル、ロキソプロフェン、マンニトール+デキサメタゾンおよび huoxue zhitong 煎じ薬よりも高かった。また、2件の個別試験のVASスコアでも、イブプロフェンまたはマンニトール+デキサメタゾンと比較して鍼治療が優れていた。

私の経験でも、臨床的に、鍼治療はLDHに対して即効性が認められる。この結果から言えることは、一般的な病態認識の方に問題がある(仮説に誤りがある)。

出典文献
Acupuncture for lumbar disc herniation: a systematic review and meta-analysis.
Tang S, Mo Z, Zhang R.
Acupunct Med. 2018 Mar 1. pii: acupmed-2016-011332. doi: 10.1136/acupmed-2016-011332.

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血清ヒアルロン酸は肝障害の重症度と共に上昇する [ヒアルロン酸]

肝硬変の重症度(Child-Pughスケール)と血清ヒアルロン酸(HA)濃度との間には相関関係が認められ(R = 0.679、P = 0.000)、肝臓損傷の最も重篤な段階においてHA濃度がより高いことが示されている。
(Monika Gudowska, et al., 2016)

前回に続き、ヒアルロン酸について考えてみたい。

この研究は、20人の健康なボランティア、およびアルコール性肝硬変(AC)患者57名、非アルコール性肝硬変(NAC)30名、および中毒性肝炎(HT)22名の血清サンプルについて、スピアマンの順位相関試験によって比較している。肝硬変患者はChild-Pughスコアに従って分類。ヒアルロン酸濃度は免疫化学的方法により測定。肝線維化の非侵襲的マーカーであるAPRI、GAPRI、HAPRI、FIB-4、およびForn's indexと比較。

ANOVA rank Kruskal-Wallis検定により、肝硬変の重症度が最も高いChild-PughクラスCとクラスBの比較では平均HAレベルは約2.5倍を示し、クラスAとの比較では7倍高いことが示された。

肝線維化および肝硬変に至る共通の経路は、細胞外マトリックス(ECM)の沈着が増加することである。これは、コラーゲン、糖タンパク質およびヒアルロナンの分子および組織学的再構成による。 ヒアルロン酸(HA)は体内のあらゆる組織に存在する高分子グリコサミノグリカン(多糖類)であり、ヒアルロン酸合成酵素と呼ばれる酵素によって滑膜細胞と肝星状細胞(HSC)で合成されている。肝臓では、類洞内皮細胞によって分解されるため、肝臓細胞傷害および炎症反応によって血清HAレベルは影響され得る。血液中の半減期が短いため(2-5分)、血清HAレベルは肝線維症段階を反映する。

肝疾患におけるヒアルロン酸濃度の増加は、肝線維形成および線維化の増加に起因する可能性があることはこれまでにも知られていた(1)。ヒアルロン酸の血清レベルは、ECMの血清レベルが変化する慢性肝疾患において上昇することが見出されおり、これらには、アルコール性および非アルコール性脂肪性肝炎、B型肝炎、C型およびその他が含まれる(2.3.)。

これらの臨床状態において、HAは、単独で、またはHAを主要な構成要素とするアルゴリズムモデルにおいて使用することが期待される。

本来、肝障害後に生成されたヒアルロン酸を含む過剰なECMは、修復プロセスが完了した時点で取り除かれる。進行性の肝硬変とは、長期におよぶ修復プロセスの欠陥による、慢性的な傷害および線維化の結果であることを考慮することが重要。

肝疾患におけるヒアルロン酸、APRI、GAPRI、HAPRI、FIB-4およびForn's指標の診断有用性について。

ヒアルロン酸およびGAPRIは、アルコール性肝硬変(両者100%の特異性を有する)を除外して、最高および同等の検出能力(両者の感度98.2%)を有する。さらに、Fornの指数およびGAPRIが、非アルコール性肝硬変を有する全ての患者を正しく同定することが示された(感度100%)。非アルコール性肝硬変を除外する能力では、Forn’s index, APRI, FIB-4 and HAPRI (in order dependent on the NPV)の4つの指標は100%の特異性を示した。中毒性肝炎の検出において、 GAPRI. GAPRI, APRI, HA およびHAPRIは、最も高い感度と100%の特異性を有しており、中毒性肝炎のないすべての患者を正しく同定する。

出典文献
Hyaluronic acid concentration in liver diseases
Monika Gudowska, Ewa Gruszewska, Anatol Panasiuk, et al.,
Clin Exp Med. 2016; 16(4): 523–528.
Published online 2015 Sep 9. doi: 10.1007/s10238-015-0388-8

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Rockey DC, Montgomery B. Noninvasive measures of liver fibrosis. Hepatology. 2006;43:S113–S120. [PubMed]

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血清ヒアルロン酸濃度は膝OA進行の予測因子となる [ヒアルロン酸]

血清ヒアルロン酸(sHA)は、変形性膝関節症(OA)の血清バイオマーカーであり、患者ではsHA濃度は上昇する。さらに、sHA濃度と病態の進行には正の相関が認められ、膝OA進行の有用な予測因子になる可能性があると報告されている(Eiji Sasakiら, 2015年)。

膝OAは、伝統的に臨床的および放射線学的所見に基づいて診断されている。しかし、臨床的な診断が行われる頃には関節組織の変性が進行しているため、治療によって治癒することはほぼ無いと言える。従って、早期に診断するためのバイオマーカーが求められている。

444人を登録し、ベースライン時のsHA濃度を測定して前向きに調査。膝OAの変化はKellgren-Lawrence(KL)グレードに従って分類し、関節腔狭窄(JSN)は変形性関節症コンピュータ診断支援(KOACAD)システムを用いて測定。 sHA濃度、KLグレードの進行、およびJSNとの相関は潜在的交絡因子を考慮して回帰モデルを用いて評価。

放射線学的評価では、KLグレード0または1が323人、グレード2は91人、グレード3は28人、およびグレード4は2人。 5年後のエンドポイントでは、ベースライン時にKLグレード0,1,2または3の443人の参加者中、190人(42.1%)が進行し、膝OA は14膝で発症。

より高いsHA濃度はKL等級進行に相関し(p = 0.004)、JSNの進行と正の相関を示した。SpearmanのsHA濃度とJSNの相関係数は0.404(p <0.001)。本研究によって、sHAカットオフ値は51.9ng / mlと推定され、JSNリスクは約5倍増加した(KL grades 2 or 3からのodds ratio は4.89)。

調整ロジスティック回帰分析によって、より高いsHA濃度がKLグレード2または3からの進行と相関(p = 0.004)したが、0または1からの進行とは相関しなかった(p = 0.196)。女性とKLグレード0または1のOA発症とは正に相関し、老化とより高いBMIはOAの発症および進行と相関した。

従来の縦断研究でも、ベースライン時のsHA濃度がKL等級の進行と正に相関することが示されていた(1.2.)。さらに、ベースラインのsHA濃度は正常および重度の膝OAの両方においてJSNと相関し、重症度だけでなく進行の可能性も反映しており、JSNを予測するための予後マーカーとして有用であり得る。

OAは長期的な慢性疾患であるため、5年間の観察ではsHAとOAの発生率との関係を完全に証明することは困難だが、sHA51.9ng / mlのカットオフ値がROC分析に基づくOA進行を予測できることを示す、最初の報告である。

OAは、耐荷重領域を中心とした関節軟骨の局所的損傷、関節縁における骨棘形成、軟骨下骨変化、および滑膜炎を特徴とする。滑膜炎はOAの発症時に存在し、ヒアルロン酸(HA)および炎症性サイトカインの産生をもたらす。

さらに、滑膜炎は線維芽細胞を活性化し、腫瘍壊死因子-αおよびインターロイキン-1βなどの他の炎症性サイトカインの産生を促進する。また、これらのサイトカインは、関節軟骨基質を分解する線維芽細胞によるマトリックスメタロプロテイナーゼ産生を促進する。従って、滑膜炎の存在は、膝OAの進行に寄与すると考えられている。

sHAは膝OAのバイオマーカーの中でも特に有望であり、以前のいくつかの横断的研究では、診断だけでなく、病気の持続時間、重症度、OA関連膝痛の程度を特定するためにも有用であることが報告されていた(3.4.)。sHA濃度は、OA発症時に存在する滑膜炎の程度を反映すると考えられ、プロテアーゼおよびサイトカインを産生することによって疾患の進行を促進する。したがって、sHAは進行性膝OAの予後指標となる可能性があるが、これまでは、膝OAとの関係はいくつかの縦断研究のみであった(5.6.)。

出典文献
Serum hyaluronic acid concentration predicts the progression of joint space narrowing in normal knees and established knee osteoarthritis – a five-year prospective cohort study
Eiji Sasaki, Eiichi Tsuda, Yuji Yamamoto, Shugo Maeda, Ryo Inoue, Daisuke Chiba, et al.,
Arthritis Res Ther. 2015; 17: 283.
Published online 2015 Oct 10. doi: 10.1186/s13075-015-0793-0

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高レベルHDLコレステロールは心疾患による死亡リスクを増加させる [医学一般の話題]

一般的に善玉と言われている、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)が原因特異的心疾患(CVD)死亡率に及ぼす影響を調べた研究(日本)によって、高レベルでは、冠動脈疾患および脳梗塞リスクの増加と有意に関連したと報告されている。

研究は、40-89歳の43,407人の参加者を対象とする、9つの日本人コホートの分析。参加者をHDL-Cレベルで5群に分類。最高レベルをHDL-C≥2.33mmol/ L以上(≧ 90mg / dL)とし、コホート層別Cox比例ハザードモデルによって、全死因死亡および原因別死亡を1.04~1.55mmol/L(40~59mg/dL)の群と比較して、各群の調整ハザード比を推定。

アテローム性CVDによる死亡リスクのハザード比は2.37(hazard ratio = 2.37, 95% confidence interval: 1.37-4.09 for total)。

12.1年の追跡期間中に、全死因死亡が4,995人、CVDによる死亡が1,280人確認されている。

Association of extremely high levels of high-density lipoprotein cholesterol with cardiovascular mortality in a pooled analysis of 9 cohort studies including 43,407 individuals: The EPOCH-JAPAN study.
Aya Hirata, Daisuke Sugiyama, Makoto Watanabe, Akiko Tamakoshi, et al.,
Journal of clinical lipidology. 2018 Feb 08; pii: S1933-2874(18)30034-5.

最近のいくつかの研究でも、CVD事象に対する高レベルのHDL-Cによる有害作用が報告されている。

実験的および観察的研究によって、HDL-Cが特定の状態においてアテローム保護機能を失い、炎症性の性質をもつことが示されている。


ホルモンの変化、特にエストラジオールの減少は、更年期移行(MT)中のHDLの質を潜在的に損なう可能性のある危険因子の蓄積に影響する。女性が閉経期に移行するにつれて、HDL-Cレベルの上昇は独立してより大きな頸動脈内膜厚(cIMT)進行と関連することが報告されており、期待される心臓保護効果を示さない可能性がある。

ncrease HDL-C Level over The Menopausal Transition is Associated with Greater Atherosclerotic Progression
Samar R. El Khoudary, Lin Wang, Ms,a Maria M. Brooks, Rebecca C. Thurston, et al.,
J Clin Lipidol. 2016 Jul-Aug; 10(4): 962–969.
Published online 2016 Apr 26. doi: 10.1016/j.jacl.2016.04.008


また、高HDL-Cレベルが、進行性腎機能障害を有するループス腎炎(Lupus nephritis、LN)患者において、末期腎疾患(ESRD)リスクの増加と関連していることも報告されている。同時に、低HDL-CレベルもLN患者の全死因死亡のリスク増加と関連していた。

Effect of low and high HDL-C levels on the prognosis of lupus nephritis patients: a prospective cohort study
Peiran Yin, Ying Zhou, Bin Li, Lingyao Hong, et al.,
Lipids Health Dis. 2017; 16: 232.
Published online 2017 Dec 6. doi: 10.1186/s12944-017-0622-3

「悪玉・善玉コレステロール」という、単純な分類は意味がないことは明らか。


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手根管症候群とLinberg-Comstock症候群 [鍼治療を考える]

手根管症候群は、各種の絞扼性神経障害の中でも最も有名であり、患者数も多い。しかし、鍼治療の臨床において判断に苦慮する症例に出会うことがしばしばある。特に、私がentrapment pointとして疑いをもっているのは手関節の近位(関節より1~1.5横指)であり、それは手根管の外である。

そもそも、手根管中の筋・腱および動脈だけではなく、その周囲にはこの領域を通過する神経に影響をおよぼす多くの解剖学的変異がある。手根管内部では、長掌筋の筋腹が手根管内部に及んでいる異常例や、正中動脈の遺残例などによる圧迫が見られる。しかし、手根管より近位の関節周囲における絞扼については、文献を探しても明確なものは見つけられない。1つの可能性として、「Linberg-Comstock症候群」ないしはその亜型が候補として考えられる。

1979年、LinburgとComstockらは、長拇指屈筋(FPL)腱と示指の深指屈筋(FDP)腱を結ぶ、肥厚した滑膜組織のfibrous bandの存在と、その病状を報告している。また、彼らは臨床診断のための試験も記載している。

この異常例では、FPLとFDPが腱様組織によって連結されているため、拇指のMCP関節とIP関節を屈曲すると示指のDIP関節も屈曲してしまう。彼らは、この試験が人口の31%で陽性であると報告し、死体では25%で異常を証明している。通常、このような異常があっても問題は起こらないが、患者では拇指の屈曲で痛みが生じ、この示指を他動的に伸ばそうとすると痛みが増悪する。

外傷後の炎症などによって発症し、遠位前腕における説明できない慢性疼痛や手根管症候群に類似した症状を示す。2本の腱に独立した動作が強要されるような動きによって、裂けるような痛みが誘発される。この2本の腱の位置関係から、このfibrous bandが正中神経を直接圧迫することは考えにくい。しかし、、、。

神経伝導速度測定やPhalen testが陽性であったことから、手根管症候群と診断されたものの手根管の範囲を触診しても明確なentrapment pointを見いだせず、治療効果も良好ではない患者が時々来院する。

私は、これらの患者の原因として、FPLとFDPを結ぶfibrous bandによって正中神経が圧迫される可能性があるものと推測している。さらに、拇指屈曲テストが陰性の者では、正中神経が浅指屈筋の下から、その筋腹の辺縁をまたいで浅層に出る部位で圧迫される可能性も推測しており、Phalen testはこの病態に関連しているのではないかと疑っている。

当院を受診したこれらの患者の中には、手関節の近位に圧通があり、手関節の屈曲と同部位の圧迫でシビレを誘発できる者が散見される。しかし、検索した文献では、Linberg-Comstock症候群の手術例の写真や模式図には正中神経が示されていない。さらに、fibrous bandによる絞扼の明確な記述も認められないため確証は無い。また、検査手段が使えない鍼灸師では検証は不可能である。しかしながら、臨床的には、診断および治療効果から手応えを感じている。今後、自説を検証できるような文献と、症例が揃った段階で改めて紹介したい。

(尚、拙著「絞扼性神経障害の鍼治療」には、この「Linberg-Comstock症候群」は記していない。今後、症例を増やすことができて自説の信憑性が高くなれば、改訂版を出す機会に書きたいと思っている。)

引用文献
Operative treatment of Linburg-Comstock syndrome
S. Badhe, J. Lynch, S. K. S. Thorpe, L. C. Bainbridge
The Bone &Jouunal
DOI: 10.1302/0301-620X.92B9.23577 Published 26 August 2010

Anatomical variations of the carpal tunnel structures
Ryan Mitchell, Amy Chesney, Shane Seal, Leslie McKnight, Achilleas Thoma,
Can J Plast Surg. 2009 Autumn; 17(3): e3–e7.

Carpal tunnel: Normal anatomy, anatomical variants and ultrasound technique
A. Presazzi, C. Bortolotto, M. Zacchino, L. Madonia, and F. Draghi
J Ultrasound. 2011 Mar; 14(1): 40–46.
Published online 2011 Feb 3. doi: 10.1016/j.jus.2011.01.006

Carpal tunnel syndrome secondary to an accessory flexor digitorum superficialis muscle belly: case report and review of the literature
Saqib Javed, Michael Woodruff
Hand (N Y). 2014 Dec; 9(4): 554–555.
Published online 2014 Mar 4. doi: 10.1007/s11552-014-9622-1

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ヒスタミンは星状細胞の神経保護効果を増加させる [医学一般の話題]

ヒスタミンと言えば、花粉症のこの季節において大敵であり、アレルギー性の皮膚疾患では抗ヒスタミン剤が欠かせない。ヒスタミンは炎症の強力なメディエーターであり、自然免疫および後天性免疫のレギュレーターである。

現在、4つのヒスタミン受容体が同定されており(H1-H4)、そのうちの3つ(H1-H3)が脳で顕著に発現する。ヒスタミンは、主要なアミノ作動性脳神経伝達物質であり、イオン恒常性、エネルギー代謝、および神経伝達物質クリアランスなど、星状細胞の活動に重要な影響を及ぼす。

この星状細胞(Astrocytesアストロサイト)は、中枢神経系(CNS)において最も豊富に存在する非神経細胞集団であるが、不活性な足場またはハウスキーピング細胞として概念化されてきた。しかし最近では、この細胞集団がCNSにおける免疫応答を能動的に調節することが示唆されている。

星状細胞の軽度の活性化は、通常、神経保護効果を発揮して神経変性の初期症状を改善する。例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびニューロトロフィン-3(NT-3)などの神経栄養因子を放出してニューロンの生存を促進し、シナプスの恒常性を維持する。また、最近の研究では、GDNFは小膠細胞の活性化を阻害して神経炎症を緩和することが示唆されている。

しかし、星状細胞の活性化や、脳の炎症におけるヒスタミンの役割については未解明。この研究では、星状細胞がH1、H2、およびH3を発現するが、H4受容体を発現しないことを明らかにした。また、ヒスタミンは、これらの3つのヒスタミン受容体の発現を選択的にアップレギュレートして星状細胞の活性化を誘導した。さらに、H1、H2、およびH3受容体を誘発することによってTNF-αおよびIL-1βの産生を抑制し、アストロサイトによるGDNFの合成を刺激した。したがって、ヒスタミンは、GDNF合成のアップレギュレーションに伴う星状細胞TNF-αおよびIL-1β産生を抑制することで、星状細胞の神経保護効果を誘発すると考えられる。

しかし一方、星状細胞の強力な活性化は、大量のサイトカイン、ケモカイン、活性酸素種、および炎症促進性メディエーターを分泌させ、ミクログリア、ニューロン、および周囲の細胞状態に影響を与え、興奮毒性、神経変性およびアポトーシスを促進する。

本研究では、ヒスタミン(0.001,0.01,0.1,1μg/ml)が星状細胞に神経保護作用および抗炎症作用を及ぼす傾向があることを確認している。しかしながら、高濃度でのヒスタミンの影響は知られていない。マスト細胞の主要な分泌タンパク質であるトリプターゼは、低濃度では細胞内ROS産生を適度に減少させるが、星状細胞では高濃度でTNF-αおよびIL-6分泌を有意に増加させることが判明している。したがって、傷害を受けたCNSにおいて、星状細胞が多面的な役割を果たすことを示しており、CNS傷害の性質および重症度によって、異なる様々なシグナル伝達事象を通じて状況依存的に決定されると推測される。

出典文献
Histamine upregulates the expression of histamine receptors and increases the neuroprotective effect of astrocytes
Jiawen Xu, Xiang Zhang, Qingqing Qian, Yiwei Wang, Hongquan Dong, Nana Li, et al.
Journal of Neuroinflammation201815:41
https://doi.org/10.1186/s12974-018-1068-x
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体温の不明な増加は死亡率の予測因子となる [医学一般の話題]

個人のベースライン温度は測定誤差または環境要因のみに起因するものではなく、有意義な変動を示して患者要因と相関することが報告されている。

デザインは、観察コホート研究。大規模研究病院の電子記録のデータセットから、2010~12年に病院の救急部および外来を受診した患者を同定し、これらの患者の2009~14年の体温測定を含む外来受診データを収集37万4,306件)。これらの患者より、感染症の診断を受けていないか抗菌薬を処方されておらず、体温が正常範囲内と予測される患者3万5,488例(体温測定:24万3,506件)を解析の対象とした。

平均温度は36.6℃(95% range 35.7-37.3℃, 99% range 35.3-37.7℃)。

原因不明の温度変動はその後の死亡率の重要な予測因子であった。具体的には、0.149℃の増加は、年間8.4% の死亡率上昇に関連した(P=0.014)。

体温は加齢とともに低下し、年齢が10歳高くなるごとに0.021度低くなった(p<0.001)。白人男性と比較して最も体温が高かったのはアフリカ系米国人女性で、0.052度の差が認められた(p<0.001)。

疾患別では、甲状腺機能低下症は-0.013℃(P = 0.01)、癌では0.020高くなる(P <0.001)。

従来、深部体温の研究は、主に平均体温の確立に重点が置かれてきた。しかし、体温は多様な因子の影響を受けており、個々の患者のベースラインの体温には系統的な差がある可能性がある。

最も注目すべきことは、気温と死亡率の関係。 これは、ショウジョウバエおよびCaenorhabditis elegansをはじめとする一連の(恒温性)実験モデル、およびより低い体温に設計されたトランスジェニック(恒温動物)マウスにおいて、体温の低下が寿命を延ばして老化を遅延させることを示す研究結果に適合する。

個々の温度は、患者の特徴、特に代謝および肥満に関連するものと高度に相関していた。これらの違いは、明らかな熱力学的要因による可能性がある。この研究結果は、個人のベースライン温度の生物学的根拠は何かという、一連の質問を提起している。

また、この研究から得られた知見は、「ビッグデータ」が新しい医療知識を生み出すために役立つことをを示している。

出典文献
Individual differences in normal body temperature: longitudinal big data analysis of patient records
Ziad Obermeyer, Jasmeet K Samra, Sendhil Mullainathan,
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5468 (Published 13 December 2017)
Cite this as: BMJ 2017;359:j5468

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高脂肪食の摂取は視床下部における炎症応答を活性化する [栄養の話題]

食餌誘発性肥満では、長鎖飽和脂肪は視床下部でTLR4および小胞体ストレス依存性炎症反応を引き起こし、食物摂取およびエネルギー消費を制御するニューロンに対して重度の損傷を与える。

体重の恒常性は、身体のエネルギー状態を感知するニューロンと食物摂取およびエネルギー消費を調整するエフェクターニューロンとの複雑な相互作用に依存している。

身体のエネルギー状態を感知するニューロンの多くは視床下部に存在し、全身エネルギー貯蔵の短期および長期変動を示す循環ホルモンおよび栄養素に応答するように設定されている。

この研究では、マウスに高脂肪食を与え、リアルタイムPCR、イムノブロット、免疫蛍光法、透過電子顕微鏡、および代謝測定を用いて分子および構造を調べている。

その結果、高脂肪食の摂取は他の脳室領域の変化に先立ち、正中隆起に炎症性サイトカインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を増加させた。正中隆起β1細胞の構造的組織の早期喪失を引き起こし、BDNFの免疫中和によって、正中隆起の血液/脊髄液界面の食事誘発機能損傷と食餌誘導性視床下部炎症を悪化させて体重を増加させる。

脳由来の神経栄養因子は損傷に対して早期に防御するが、大量の食物脂肪が持続的に消費されるとその機能が失われる。

出典文献
Dietary fats promote functional and structural changes in the median eminence blood/spinal fluid interface—the protective role for BDNF
Albina F. Ramalho, Bruna Bombassaro, Nathalia R. Dragano, et. al.,
Journal of Neuroinflammation201815:10
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1046-8

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雷雨によって急性呼吸器患者の救急搬送と院内心停止の発生率が増加した [環境問題]

雷雨喘息(thunderstorm asthma)は希な症状で、日本ではほとんど聞かれないが、花粉のようなアレルゲンと雷雨が重なるとハイリスクの人々に重症の喘息などを起こすことが海外では報告されている。

オーストラリアのビクトリア州メルボルン市周辺では、発生した雷雨(2016年11月21日)によって雷雨喘息が多発する緊急事態に遭遇した。今回の患者数は非常に多く、約1万3000人が医療機関を受診し、その内の3000人以上が呼吸器症状を訴えていた。

午後6時から深夜までの救急要請は予想の2.5倍、急性呼吸器疾患のための救急医療出勤が432%増加し、病院への緊急輸送は17%増加。院内心停止の発生率は 82%(67% ~ 99%)増加し、病院前死者は 41%(29% ~ 55%) 増加したと報告されている。

雨によって穀物が膨張して破裂し、細かい呼吸粒子となって細気管支まで侵入してアレルゲンとなり喘息発作を誘発すると考えられているが、検証されているわけではない。

気象因子として、気温、湿度、気圧などと喘息患者の症状との関連性を調べた研究は数多い。気象因子の絶対値と他の環境因子(大気汚染浮遊粒子濃度など)と喘息の相関関係を重回帰分析によって調べている文献が多いが、結果は相反する内容となっている。例えば、気温については相反する結果が得られており、他の気象因子についても明確な関連性は認められていない。一方、NOx,SO2,黒煙などの大気汚染浮遊物や,花粉などのアレルゲンが喘息の悪化と関連しているとする報告はある。イギリスでは、落雷によって、救急処置を要する喘息患者が多発したという報告が多く見られる。この要因として、雷が発生する時の気象条件が草花粉の地上付近での濃度を上げていることが一因と考えられている。

しかし。

個人的には、雷の空中放電によって生じた、窒素酸化物による気道への直接的な作用が大きいのではないかと推測するのだが、この文献ではそのような指摘は記されていない。

雷による空中放電のエネルギーで、大気中の窒素が酸素と反応して二酸化窒素などの窒素酸化物が生成され、さらに酸素によって硝酸へと酸化される。

大気中の亜硝酸による生体影響は懸念されているものの報告例は少なく、規制の対象とはなっていない。一方、二酸化窒素は、疫学調査で喘息に影響するとされ、1970年代に規制されている(但し、二酸化窒素測定法では亜硝酸も二酸化窒素として測定されるため、疫学調査による喘息影響が二酸化窒素と亜硝酸のどちらに起因するものかは不明。)

窒素は大気の約78.08%を占めるが、非常に安定しているためそのままでは利用できない。地球生態系では、不活性の窒素ガスを反応性の高い窒素化合物に変換するプロセスが2つがある。その1つは、マメ科植物の根粒菌による窒素固定で、年間1.8億トン。もう1つは、雷の放電による窒素固定で、年間0.4億トンと言われている。

発作の予防として。

喘息予防薬を服用している患者では11月21日の喘息発作の増加は21.3%であったのに対し、拡張剤のみを服用した患者では103.1%増加した。また、単独服用患者の緊急医療サービスの累積需要(incident rate ratio 9.39) は、喘息予防薬を服用している患者(incident rate ratio 1.68)の5倍以上であった。日頃の、抗炎症治療が重要となる。

出典文献
Stormy weather: a retrospective analysis of demand for emergency medical services during epidemic thunderstorm asthma
Emily Andrew, Ziad Nehme, Stephen Bernard, et .al.,
BMJ 2017; 359 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5636 (Published 13 December 2017)
Cite this as: BMJ 2017;359:j5636

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CD34 陽性自家造血幹細胞移植によって強皮症患者の生存率が向上した [医学一般の話題]

びまん性皮膚全身性硬化症 (強皮症) 患者を対象とする、CD34+選択自家造血幹細胞移植の効果をシクロホスファミドと比較した研究で、CD34+は全生存率とイベントフリー生存率が改善したと報告されている。

重度の強皮症は壊滅的な転帰をもたらす疾患であり、現在、有効な治療法は無い。

様々な体性幹細胞の表面マーカであるCD34は、骨髄由来の造血幹細胞、血管内皮前駆細胞、骨格筋衛星細胞などに発現しているが、CD34陽性細胞を用いた血管再生療法は、急性心筋梗塞や拡張型心筋症など、様々な心血管疾患患者を対象とした治療に使われ初めており、高い安全性と良好な初期成績が報告されている。

この研究は、重症強皮症の成人 (18 ~ 69 歳) を無作為に、CD34+選択自家造血幹細胞移植群(n=36)とシクロホスファミド群(12ヶ月投与n=39)の2群に分けて比較したもの。

主要エンドポイントは、疾患特徴の階層に基づくグローバルランクの複合スコアによって評価。その内容は、54ヶ月における死亡、イベントフリー生存 (呼吸、腎臓、または心不全のない生存)、強制肺活量、健康評価のアンケートによる障害指標スコア、および変更された Rodnan スキンスコア。

54 ヶ月のイベントフリー生存率は、移植群79%、シクロフォスファミド群50%(P=0.02)。

72ヶ月におけるKaplan–Meierでは、イベントフリー生存率は74% vs 47%、全体の生存率も86% vs 51%と移植を支持(P=0.03 and 0.02, respectively)。

移植群の参加者は、54ヶ月までに9%が抗リウマチ薬(DMARDs)を開始し、シクロホスファミド群では44%であった(P=0.001)。

治療関連死亡率は、移植群は54ヶ月で 3%、72カ月では6%であったのに対し、シクロホスファミド群は 0% であった。

CD34+選択自家造血幹細胞移植によって、重症強皮症患者のイベントフリー生存率が6年間で74%であったことは朗報と言える。

出典文献
Myeloablative Autologous Stem-Cell Transplantation for Severe Scleroderma
Keith M. Sullivan, Ellen A. Goldmuntz, Lynette Keyes-Elstein., et. al.,
N Engl J Med 2018; 378:35-47January 4, 2018DOI: 10.1056/NEJMoa1703327

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基準値以下でも微小粒子状物質とオゾン暴露の増加で死亡率は上昇する [環境問題]

大気汚染への短期的な暴露と死亡率の関係について調査した研究の結果、基準値以下であっても、微小粒子状物質とオゾン暴露の増加によって死亡率が上昇した。

PM2.5とオゾンに対する短期曝露(死亡の同じ日と1日前の日の平均曝露の平均)と2年間の死亡率との間の関連性を、ケース・クロスオーバー設計と条件付ロジスティック回帰汚染物質モデルによって推定。

短期間における、PM2.5 の10 μg/m3増加(adjusted by ozone)による相対リスクの増加は 1.05% (95% CI, 0.95%-1.15%)、温暖シーズンのオゾン濃度の10ppbの増加(adjusted by PM2.5)による1日当たりの死亡率増加は0.51% (95% CI, 0.41%-0.61%)。

1日の死亡率の絶対リスクは、1日、100万人当たり1.42(95%CI、1.29-1.56)および0.66(95%CI、0.53-0.78)であった。尚、この調査では、暴露 - 反応関係には閾値は認められなかった。

しかしながら、このような研究は目新しいものではない(私が以前に検索した文献だけでも400件近く存在する)。

以前に、私が、36件の同様の研究報告を統合して解析した結果では、10ppbの上昇24時間で死亡率は約1%増加し、呼吸器疾患では3%増加した。糖尿病では、10ppb8時間で8.28%増加したとする報告もあった。これらの数値を見ても実感が沸かないかも知れないが、インフルエンザの致死率がわずか 0.045%であること(WHO報告)と比較すると、影響の大きさが理解できるはずである。

* 因みに、1ppb とは、1000m×1000m×1000mの容積中に1辺が1cmの物質が1個存在することを意味している。

日本における環境基準値は0.06ppmで、作業環境におけるオゾン濃度基準では0.1pmを許容濃度としている。これは、1日8時間、週40時間程度の労働時間中に暴露する濃度の算術平均値がこれ以下であれば健康被害は起こらないとする考である。しかし、認識の誤りは明確である。知らぬ間に、作業環境の中で(例えば、電気溶接など)呼吸器や心臓血管にダメージを受けているのである(急性死するような濃度では、その臭いによって感知できる。)。

酸素分子が3つ結合したオゾンは強力な酸化剤であるため、地上レベルに存在するオゾンは大気汚染物質である。その酸化力と、反応後は無害なことから殺菌・消毒目的に使用されているが、人体に対しては有害である。室内の殺菌・浄化をうたい文句にしたオゾン発生器(日本では基準や規制が無い)は危険であり、健康被害の報告も散見されている。しかし、ほとんどの人は、自身の不調の原因として認識できていないのが現実である。

出典文献
Association of Short-term Exposure to Air Pollution With Mortality in Older Adults
Qian Di, Lingzhen Dai, Yun Wang, et al.,
JAMA. 2017;318(24):2446-2456. doi:10.1001/jama.2017.17923

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ω-3脂肪酸の摂取量と緑内障リスクの関連性 [栄養の話題]

アメリカにおける、多価不飽和脂肪酸(特にω-3脂肪酸)の日常摂取量と緑内障の罹患率との関連性について調査した研究で、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸摂取量の増加は緑内障のリスク低下と関連していた。しかし、より高い四分位数での全不飽和脂肪酸摂取量では緑内障リスクは有意に上昇した。

研究は、3865名を対象にした横断的集団調査。

エイコサペンタエン酸の毎日の食事摂取量の増加は、オッズ比0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)。ドコサヘキサエン酸も、OR、0.06(OR, 0.06; 95% CI, 0.01-0.87)と、オッズ比の有意な低下と関連していた。

しかし、総食餌性多価不飽和脂肪酸の第2四分位のORは2.84(95% CI, 1.39-5.79)、および第3四分位のOR2.97(95% CI, 1.08-8.15),95%CI、1.08-8.15)と、より高い四分位数における全不飽和脂肪酸摂取量の日常レベルでは緑内障罹患率は有意に上昇した。

これらの知見は、ω-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸)の緑内障に対する作用を評価するためには、縦断研究または無作為化臨床試験が必要であることを示唆している。

出典文献
Association of Dietary Fatty Acid Intake With Glaucoma in the United States
Ye Elaine Wang, Victoria L. Tseng, Fei Yu, et al.,
JAMA Ophthalmol. Published online December 21, 2017. doi:10.1001/jamaophthalmol.2017.5702


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出生前アルコール暴露は成人発症性神経因性疼痛のリスク要因となる [医学一般の話題]

出生前アルコール暴露(PAE)による影響が成人期まで持続することは、これまでにも多くの臨床研究で報告されている。本研究では、PAEが脊髄星状細胞および末梢白血球を初回刺激して成人発症性神経因性疼痛に対する感受性を持続させることが示されている。

軽度の坐骨神経慢性狭窄傷害(CCI)がPAEラットにおいてのみ頑強なアロディニアを引き起こす。同時に、CCI適用後のPAEの病理学的効果は、アロディニアの増強および脊髄グリア活性の上昇によることを示している。

さらに、軽度のCCIでは脊髄星状細胞活性化は増加するが、ミクログリアは増加しないため、星状細胞がPAE誘発感覚プロセッシングに対する感受性に大きな役割を果たすことを示唆している。

PAE由来の白血球集団は、リンパ系器官および他の領域における白血球集団の分布と異なっている。また、 in vitroにおける白血球刺激後、PAEのみがTNF-αおよびIL-1βの産生を増加させるなど、抗原刺激に対する免疫応答が増大する。

CCI操作は4つのクロマチン縫合による。軽度のバージョンは1つの坐骨神経周囲を単一の縫合によってゆるく結紮している。脊髄神経膠免疫反応性を免疫組織化学を用いて調べ、白血球集団の特徴づけおよび機能的応答を、フローサイトメトリーおよび細胞刺激アッセイを用いて試験。さらに、炎症誘発性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を定量している。

最近の報告でも、妊娠中の母体におけるピーク血清エタノール平均レベルが60-80mg/dLの適度な飲酒が、免疫活性化または神経組織へダメージを与えて後期中枢神経系(CNS)機能不全を悪化させるという考えを支持している。

出典文献
Prenatal alcohol exposure is a risk factor for adult neuropathic pain via aberrant neuroimmune function
Joshua J. Sanchez, Shahani Noor, Suzy Davies, Daniel Savage, Erin D. MilliganE,
Journal of Neuroinflammation201714:254
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1030-3

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退役軍人の慢性的筋骨格系痛にみる脳白質構造の崩壊 [医学一般の話題]

ペルシャ湾岸戦争(1990-1991)における700,000人の退役軍人の約25%に慢性的な筋骨格痛(CMP)が存在するが、痛みの原因は不明で効果的な治療法もないとのこと。少数の文献によって、湾岸戦争退役軍人(GV)の脳に異常が存在すると示唆されているが、症状との因果関係については未解明。

本研究は、GVCMPと健康なベテランコントロール(GVCO)の白質(WM)を比較して、脳の完全性と症状の関係を調べている。

30人のGVCMPおよび31人のコントロールに対し、拡散テンソルイメージングによる磁気共鳴イメージングを実施。脳を中心とした空間的統計量は、全脳におけるWMの分数異方性、平均拡散率、放射拡散率、および軸方向拡散率を推定し(P <0.05)、閾値のないクラスター増強を用いて補正。

GVCMPは、GVCOと比較して、より大きな疼痛症状、気分障害、より低い生活の質および身体機能を有していた(P <0.05)。

GVCMPは、慢性疼痛に関与する、中および下前頭回、脳梁、放射冠、前中心回旋、外嚢、および後方視床放射を含む領域の白質の完全性が低く(P <0.05)、広範な脳領域における微細構造の破壊が疼痛および気分症状と関連していた。

出典文献
Cerebral white matter structure is disrupted in Gulf War Veterans with chronic musculoskeletal pain
Van Riper, Stephanie M.a,b; Alexander, Andrew L.c; Koltyn, Kelli F.b; Stegner, Aaron J.a,b; Ellingson, Laura D.d; Destiche, Daniel J.c; Dougherty, Ryan J.b; Lindheimer, Jacob B.a,b,e; Cook, Dane B.a,b,*
PAIN: December 2017 - Volume 158 - Issue 12 - p 2364–2375
doi: 10.1097/j.pain.0000000000001038

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末梢オキシトシン受容体はWDRニューロンへの侵害入力信号を抑制する [鍼治療を考える]

脊髄後角におけるオキシトシン受容体(OTRs)は、AδおよびC線維によって媒介されて侵害受容ニューロン発射を抑制することが示唆されている。

この研究の知見では、OTRs は皮膚を支配するCGRP作動性末梢神経において発現し、表皮表層における活性化によってC 線維放電の抑制を誘発して痛覚を抑制する。

OTの皮下注射は、ラットにおけるホルマリン誘発侵害試験のフェーズI(100μg/足;図2B)およびフェーズII(31および100μg/足;図2C)におけるflinching動作を防止した。

この抗侵害受容作用は局所的であるばかりでなく特異的でもある。なぜなら、最高用量のOTによって、運動協調試験に何ら変化を与えなかったからである。

強力かつ選択的な OTR 拮抗薬のL-368899 (10 および100μ g/前足) の皮下注射は、OT 誘発行動をブロックした。尚、この効果は、ホルマリン試験の第 II 相において明らかに観察された。興味深いことに、nocifensive反応の増加は、フェーズIIの、L-368,89910μg/足において誘発された。さらに、WDRニューロン群の神経活動を測定したところ、OT誘起 a 線維およびC 線維が前足への10μg L-368899 によってブロックされた。

RFの末梢電気刺激は、脊髄後角WDR細胞の明確なニューロン応答を誘発したが、OT(sc; 1〜56μg/50μL)の単回皮下投与後、AδおよびC線維の発火反応の用量依存的な減少が観察された。

末梢皮膚における OTRs の生理学的機能について、OT は培養ヒトケラチノサイトで発現し、外部刺激 (傷害に似た) に反応して放出される。鍼治療への応用を考えるには適切な刺激法とその効果を知ることが求められるが、残念ながら、この研究では調査されてはいないようだ。

オキシトシン(Oxytocin)は、アミノ酸残基9個からなる下垂体後葉ホルモンの1つ。オキシトシンは、もう1つの下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシン(Vasopressin;抗利尿ホルモン)と同様に、主に視床下部の視索上核および室傍核に局在する大細胞性神経分泌ニューロンの細胞体で産生される。

オキシトシンは、ギリシャ語okytokos(okys;速い, tokos;出産)に由来しており、子宮筋の収縮作用による分娩の促進および出産後の授乳時の射乳反射を惹起する。1953年に、動物のペプチドホルモンとしては最も早く構造が明らかにされたホルモン。しかし最近では、動物や人間においても脊髄レベルで鎮痛を誘発するため、興味深い分子として浮上している。

出典文献
Peripheral oxytocin receptors inhibit the nociceptive input signal to spinal dorsal horn wide-dynamic-range neurons.
González-Hernández, Abimaela; Manzano-García, Alfredoa; Martínez-Lorenzana, et al.,
PAIN: November 2017 - Volume 158 - Issue 11 - p 2117–2128
doi: 10.1097/j.pain.0000000000001024

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新しい抗炎症治療の可能性 [医学一般の話題]

最近では、うつ病や2型糖尿病(T2D)は生物学的起源を共有し、そのメカニズムとして、視床下部下垂体副腎の不全によって誘発された慢性的なサイトカイン媒介性炎症反応であることが示唆されている(1.2.)。T2D はうつ病のより高い感受性と関連付けられ(3.)、うつ病はT2D のリスクを60%増加させると報告されている(4.5.)。

NLRP3は免疫系タンパク質で、タンパク質複合体であるインフラマソームの構成成分であり、自然免疫機構として、病原体の構成成分などを特異的に完治して排除するために炎症応答を惹起する。しかし、その暴走は、2型糖尿病、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、および自己免疫疾患などの重篤な炎症性疾患の発症に寄与する。

糖尿病治療薬のGlyburide は、NLRP3 インフラマソームの阻害剤として有効であり、海馬のインスリンシグナリングと同様に、インスリン不耐性や行動のパフォーマンスを改善することが示されている(6.)。

しかし、Glyburide は、NLRP3 インフラマソーム活性化を防止する最初に同定された化合物だが、その多面効果の正確なメカニズムについては未だ不明確。

パターン認識受容体であるNLRP3は、過栄養によって生体内に蓄積した遊離脂肪酸や尿酸塩などの刺激性の代謝物に反応し、タンパク複合体であるNLRP3インフラソームを形成してIL-1β、IL-18の産生を誘導する。

絶食やカロリー制限、激しい運動、また、低炭水化物ケト原性食によって産生される代謝産物のβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)がNLRP3を直接阻害すると報告されている(7.)。BHBをナノ粒子に封入してから炎症性疾患のマウスモデルに投与すると、血液中のBHBレベルを上昇させるケト原性食を摂取した場合と同じように炎症症状が軽減する。これらの知見から、絶食、ケト原性食の摂取や激しい運動の際に見られる抗炎症効果の一部は、BHB産生とそれによるNLRP3の阻害が関与していると推測される。

BHB とAcAcは、エネルギー欠損状態における哺乳類の生存をサポートし、BHB は、ヒト単球で NLRP3 インフラマソームを媒介するインターロイキン IL-1α,βおよび IL-18 産生を低減する。カロリー制限やケトダイエットの抗炎症作用は、NLRP3インフラマソームの BHB 媒介阻害にリンクすることを示唆している。

さらに別の報告では、MCC950がNLRP3を直接阻害し、ヒト細胞、あるいは自己免疫疾患や自己炎症性疾患のマウスモデルにおいて炎症応答の抑制に効果が示されている。また、MCC950の抗炎症作用は、インフラマソーム複合体中の感染制御に重要な働きをする成分には影響を与えないことも示唆されている。

引用文献

1.
Moulton CD, Pickup JC, Ismail K. Depression and diabetes 2 the link between depression and diabetes: the search for shared mechanisms. Lancet Diabetes & Endocrinology. 2015;3:461–71.
View ArticleGoogle Scholar

2.
Joseph JJ, Golden SH. Cortisol dysregulation: the bidirectional link between stress, depression, and type 2 diabetes mellitus. Ann N Y Acad Sci. 2017;1391:20–34.

3.
Demakakos P, Pierce MB, Hardy R. Depressive symptoms and risk of type 2 diabetes in a national sample of middle-aged and older adults: the English longitudinal study of aging. Diabetes Care. 2010;33:792–7.
View ArticlePubMedPubMed CentralGoogle Scholar

4.
Mezuk B, Eaton WW, Albrecht S, Golden SH. Depression and type 2 diabetes over the lifespan: a meta-analysis. Diabetes Care. 2008;31:2383–90.
View ArticlePubMedPubMed CentralGoogle Scholar

5.
Campayo A, de Jonge P, Roy JF, Saz P, de la Camara C, Quintanilla MA, Marcos G, Santabarbara J, Lobo A, Project Z. Depressive disorder and incident diabetes mellitus: the effect of characteristics of depression. Am J Psychiatry. 2010;167:580–8.

6.
Antidiabetic drug glyburide modulates depressive-like behavior comorbid with insulin resistance.
Journal of Neuroinflammation201714:210 https://doi.org/10.1186/s12974-017-0985-4

7.
Yun-Hee Youm, Kim Y Nguyen, Ryan W Grant, Emily L Goldberg, et al.,
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome–mediated inflammatory disease.
Nature Medicine 21, 263–269 (2015) doi:10.1038/nm.3804

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